柏市で高低差のある土地を検討する方へ|擁壁とがけ条例の確認
柏市で土地を探していると、相場より少し手ごろな区画に出会うことがあります。図面の隅には「擁壁あり」「がけ条例の適用あり」の文字。現地に行くと、道路から一段高い敷地の縁に、古い石積みが続いている。「この壁は、このまま使えるのだろうか」「家を建てる場所に、何か制限があるのでは」。
この小さな注記が、総額を数百万円単位で動かすこともあります。そこで、千葉県我孫子市に本社を置く晃南土地の編集部が、千葉県の条例と柏市・国の公開資料を読み合わせました。千葉県柏市で高低差や擁壁のある土地を検討する方が、確かめる順番に沿って読めるようにまとめています。晃南土地は1991年から地域の不動産に携わり、売買から買取り、リノベーションまでを一社で扱っています。
この記事で分かることは、次の3つです。
- 高さの差がある土地で、家を建てられる場所がどこまで狭くなるか
- 今ある擁壁(土を支える壁)をそのまま使えるかの見分け方と、確かめる書類
- 擁壁をつくり直すときの手続きと費用の目安、売るときに響く点
擁壁や高さの判断は、土地ごとの条件で変わります。候補の土地の条件を、資料を見ながら一緒に確かめたい方はご連絡ください。柏市の高低差のある土地について「晃南土地」に相談する
柏市で高低差のある土地が生まれるのは、台地を谷が刻む地形だから
この章の要点
- 柏市は市域の約7割が台地、約3割が低地で、台地に谷が入り込んでいる
- 市の調査では、まとまった盛土の場所が115か所示され、うち112か所が谷を埋めた型
- がけ崩れのおそれがある区域は、千葉県が柏市内に179か所指定している(2026年8月7日現在)
柏市は、全体として起伏の少ない街です。それでも、道路と敷地に高さの差がある土地は珍しくありません。理由は、台地と谷が入り組んだ地形にあります。
柏市の文化財保存活用地域計画によると、市域の約7割が台地、約3割が低地です。台地は小さな川の流れに削られ、木の枝のように谷が入り込んでいます。この谷は「谷津(やつ)」と呼ばれ、この地域の地形の大きな特徴とされています。
宅地を造るときは、台地と谷の高さの差を、土で埋めたり削ったり、壁で支えたりしてきました。土を盛ることを盛土(もりど)、削ることを切土(きりど)、土を支える壁を擁壁(ようへき)といいます。
まとまった盛土の場所は、柏市が宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法)の基礎調査で公表しています。一覧に載る115か所のうち、112か所が谷を埋めた型です。地名には、藤ケ谷・大青田・手賀・柏・増尾・逆井・新逆井・戸張などが並びます。
ただし、この調査は造成の前と後の地形図を重ねて、場所と規模を拾い出したものです。市は、正確な位置を示すものではないこと、示された場所が必ずしも危険ではないことを添えています。
がけ崩れについては、千葉県が土砂災害防止法にもとづいて区域を指定しています。正式名は「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」です。県の一覧(2026年8月7日現在)では、柏市内の土砂災害警戒区域は179か所です。いずれも、急な斜面が崩れる「急傾斜地の崩壊」を対象としています。
このうち159か所は、土砂災害特別警戒区域にも重ねて指定されています。特別警戒区域では、居室のある建物の外壁などの造りにも決まりがかかります(建築基準法施行令第80条の3)。
よく見かけるのは、台地から谷へ下る道沿いに、石積みやコンクリートの壁の上の家が並ぶ場面です。壁が造られた年代や方法は、一軒ずつ違います。
地盤の強さや浸水の想定は、別の記事にまとめました。『柏のハザードマップと地盤2026|液状化・浸水リスクと安全なエリアの見極め方』をご覧ください。
高低差のある土地に関わる3つの決まり|がけ条例・建築基準法・盛土規制法
この章の要点
- 家を置ける位置は、千葉県のがけ条例が決める
- 高さ2mを超える擁壁は、建築基準法の工作物として確認と検査の対象になる
- 柏市は全域が盛土規制法の規制区域で、一定規模の造成や擁壁の工事に許可や届出が要る
高低差のある土地では、目的の違う3つの決まりが重なります。
| 決まり | 何を決めているか | 主に関わる場面 |
|---|---|---|
| 千葉県建築基準法施行条例第4条(がけ条例) | がけの近くで、居室のある建物を建てられる位置 | 家の新築・建て替え |
| 建築基準法施行令第138条・第142条 | 高さ2mを超える擁壁の確認・検査と、つくり方の基準 | 擁壁を新しく設ける・つくり替える |
| 宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法) | 盛土・切土などの工事の許可と、擁壁を壊すときの届出 | 造成、擁壁のつくり替えや撤去 |
がけ条例でいう「がけ」は、地面が水平に対して30度を超えて傾き、高さが2mを超える土地です。硬い岩盤(風化の著しいものを除く)は除かれます。高さ2m以下の段差や、30度以下のなだらかな斜面は、この条例のがけには当たりません。
建築基準法は、高さ2mを超える擁壁を、煙突や広告塔と同じ「工作物」として扱います(施行令第138条第1項第5号)。造る前に、建物の建築確認と同じしくみの確認を受け、工事のあとに検査を受けます。検査に合格すると交付されるのが、検査済証です。
ただし、盛土規制法や都市計画法の許可を受けて造る擁壁は別です。建築基準法の確認の規定は使われず(同法第88条第4項)、許可をした側の検査を受けます。手元に残る書類の種類は、擁壁が造られた経緯で変わります。
柏市は、2025年3月27日の告示で市内全域を「宅地造成等工事規制区域」に指定しました。規制は同年5月26日から始まっています。市内で次のような工事をするときは、あらかじめ柏市長の許可が要ります。
- 盛土で、高さ1mを超えるがけができる
- 切土で、高さ2mを超えるがけができる
- 盛土と切土を同時にして、高さ2mを超えるがけができる
- 盛土の高さが2mを超える
- 盛土・切土の高さが30cmを超え、面積が500㎡を超える
たとえば、低い敷地に土を盛って道路の高さにそろえる場合です。盛土の縁のがけが1mを超えれば、面積が小さくても許可の対象です。柏市の基準では、擁壁の見えている部分ではなく、がけ全体の高さで判断します。
柏市のがけ条例(崖条例)とは?千葉県の条例で家を建てる位置が決まる
この章の要点
- 柏市の土地にも、千葉県建築基準法施行条例第4条(がけ条例)が当てはまる
- がけの上は下端から高さの1.5倍、がけの下は上端から高さの2倍の範囲に、居室のある建物を建てられない
- 安全な擁壁があるなど、4つの例外のいずれかに当たれば建てられる
「柏市のがけ条例」と聞くと、柏市独自の条例を思い浮かべるかもしれません。実際には千葉県の条例です。柏市のよくある質問でも「千葉県建築基準法施行条例第4条のこと」と案内されています。条文と図は、千葉県の「がけについて」のページで読めます。
条例は、がけの上と下で、居室のある建物を建てられない範囲を決めています。居室とは、居間や寝室のように人が続けて使う部屋のことです。県の解説では、居室を持つ建物はすべて対象で、その建物の居室でない部分も制限を受けます。
| 敷地の位置 | 建てられない範囲 | 測り始める位置 |
|---|---|---|
| がけの上 | がけの高さの1.5倍の距離以内 | がけの下端 |
| がけの下 | がけの高さの2倍の距離以内 | がけの上端 |
見落としやすいのは、がけの上の範囲を「下端から」測る点です。斜面がゆるやかで横に長いほど、上の平らな部分にかかる範囲は短くなります。反対に、がけがほぼ垂直なら下端と上端がほぼ重なり、上端からほぼ高さの1.5倍の範囲がかかります。
範囲の中でも、次のいずれかに当たれば建てられます(千葉県の解説2025年版をもとに要約)。
| 例外 | 主な中身 |
|---|---|
| がけの下で、建物の側を強くする | 外壁などを鉄筋コンクリート造にするか、土砂を受け止める塀(待受け擁壁など)を設ける |
| がけから相当の距離があり安全 | がけの下なら、下端から50mを超えて離れている場合など。がけの上なら、構造計算で安全を確かめる。木造2階建て程度は、基礎を下端から30度の線より深くする方法(深基礎・杭・地盤改良)もある |
| 構造耐力上安全な擁壁がある | 検査済証のある擁壁など。家を建てるときに同時に擁壁を造る場合も含む |
| がけが崩れるおそれがない | がけの形や土質、表面の保護や排水から、崩れるおそれがないと確かめられる |
条例が認める擁壁には、条件もあります。高さ5mを超える擁壁は鉄筋コンクリート造であること。擁壁の上の地面に、雨水などを流す排水の設備があることです。
がけに当たるかどうかは、現地の状況を調べたうえで、まず設計者などが判断します。2段になったがけは、配置によって一つのがけとみなすか、2つに分けて考えるかが変わります。
販売図面には、「がけ条例の適用あり」とだけ書かれていることも少なくありません。どこまで建てられないかは、がけの高さと、上端・下端の位置が分かる測量図があれば計算できます。
がけ条例で家を建てられない範囲は?高さ別に計算する
この章の要点
- 範囲は「がけの高さ×1.5(上の敷地)」「がけの高さ×2(下の敷地)」で求める
- 高さ3mなら、上の敷地は下端から4.5m、下の敷地は上端から6mの範囲
- 高さ3mのがけで間口10mなら、45㎡ほどが居室のある建物を置けない帯になることもある
計算は単純で、がけの高さに、上の敷地なら1.5を、下の敷地なら2を掛けます。
| がけの高さ | がけの上(下端から) | がけの下(上端から) |
|---|---|---|
| 2.5m | 3.75m | 5m |
| 3m | 4.5m | 6m |
| 4m | 6m | 8m |
| 5m | 7.5m | 10m |
仮の敷地で考えてみます。間口10m・奥行15m(150㎡)の土地で、奥側に高さ3mのがけがあり、敷地はその上にあるとします。がけはほぼ垂直で、下端と上端の位置がほとんど同じという条件です。
この場合、がけの下端から4.5mの帯が、居室のある建物を置けない範囲です。10m×4.5m=45㎡で、敷地の3割にあたります。がけ条例の上で家を置けるのは、道路側の奥行10.5mの部分です。
同じ高さ3mでも、斜面が45度で横に3m広がっているなら、事情は変わります。下端から4.5mのうち3mは斜面そのものです。平らな部分にかかるのは、上端から1.5mだけになります。
範囲の中が、まったく使えない土地になるわけではありません。駐車場や庭、物置のように居室のない使い方なら、この条例の制限は受けません。
ここでの計算は、条件を単純にした仮の例です。実際の土地では、測量図と現地の状況をもとに、設計者が範囲を出します。
擁壁の種類と、古い擁壁の見分け方
この章の要点
- 鉄筋コンクリート造・重力式コンクリート造・練積み造(間知石など)は、基準のある形式
- 空石積み・増し積み・2段擁壁・床が張り出した擁壁は、国の資料で宅地に適さないとされる
- 大谷石積みは空石積みに分類するのが基本だが、国の認定を受けた構造の場合もある
擁壁は、見た目で大まかな種類が分かり、そのまま使えそうかの見当がつきます。国土交通省のマニュアル(2022年4月)の分類をもとに整理しました。
| 種類 | 見た目の特徴 | 国の資料での位置づけ |
|---|---|---|
| 鉄筋コンクリート造(L型など) | 平らなコンクリート。上端の幅は20〜30cmほどと薄い | 基準のある形式 |
| 重力式コンクリート造 | 平らなコンクリート。上端の幅は40cm前後と厚い | 基準のある形式 |
| 練積み造(間知石・間知ブロック) | 石やブロックを斜めに積み、すき間をコンクリートで固める | 基準のある形式 |
| 空石積み(野面石・玉石・ガンタ積みなど) | 石をコンクリートで固めずに積む | 宅地の擁壁に適さない |
| 大谷石積み | 柔らかい切り石を積む | 空石積みに分類するのが基本。国の認定を受けた構造もある |
| 増し積み擁壁 | 古い擁壁の上に、ブロックなどを積み足す | 宅地の擁壁に適さない |
| 2段擁壁 | 擁壁の上に、さらに別の擁壁が段になって続く | 宅地の擁壁に適さない |
| 張り出し床版付き擁壁 | 擁壁の上から、コンクリートの床が外へ張り出す | 宅地の擁壁に適さない |
国土交通省の擁壁チェックシートが挙げるのは、空石積み・増し積み・2段・張り出し床版付きの4つです。どれも「本来、宅地の擁壁として適さないもの」とされ、傷みがなくても専門家への相談を勧めています。
柏市の盛土規制法の許可基準では、擁壁をつくり替えるとき、許可を受けていないブロック造などを「ない」ものとして扱います。増し積みや2段擁壁は、検査後に無許可で手を加えた違反の例です。元に戻すか、新たな許可で解消するよう求めています。
現地では、国のチェックシートをもとに次の点を見ると、傷みの見当がつきます。
- □ 水抜き穴があるか(目安は3㎡に1か所以上、内径75mm以上)
- □ 表面がいつも湿っていたり、水がしみ出したりしていないか
- □ 擁壁の上の排水溝にずれや割れがなく、地面にひびがないか
- □ 幅1mm以上のひび割れ、とくに横方向や角の斜めのひびがないか
- □ 目地に前後・上下のずれや開きがないか(チェックシートは5mm・2cmで程度を分けている)
- □ 全体のふくらみや、前や後ろへの傾きがないか
チェックシートは、おおまかな危険度を知るための道具です。安全度が低いと出たら、詳しい調査を勧めています。
表面はきれいなのに、水抜き穴が一つも見当たらない古いブロック積みもあります。水の逃げ道がないと、雨のあとに壁の裏に水がたまり、余分な力がかかるおそれがあります。
擁壁の検査済証はどこで確かめる?書類で分かること
この章の要点
- 千葉県の解説は、検査済証のある擁壁などを「構造耐力上安全な擁壁」として挙げている
- 検査済証があっても、ひび割れや傾きがあれば補修されているかが問われる
- 書類は、売主の手元、柏市の記録、開発許可の記録の順にたどる
がけ条例の例外にある「構造耐力上安全な擁壁」について、千葉県の解説は具体的な書類を挙げています。
| 書類 | どんな擁壁か |
|---|---|
| 建築基準法の検査済証 | 工作物として確認・検査を受けた擁壁 |
| 宅地造成等規制法の検査済証 | 旧法の規制区域で、許可を受けて造った擁壁 |
| 都市計画法の検査済証 | 開発許可(まとまった土地を宅地にするときの許可)を受けた分譲地などの擁壁 |
| その他の検査済証 | 宅地開発の条例や、旧住宅地造成事業に関する法律による検査を受けた擁壁 |
県の解説は、既設の擁壁について、許可や検査の状況に加えて維持管理の状態も確かめるよう求めています。割れ・ゆがみ・傾きがあれば、補修されていることが条件です。
つまり、検査済証は判断の出発点です。書類があっても傷みが進んでいれば、建て替えのときに補修や調査を求められることがあります。反対に、書類がない擁壁でも、構造の検討などで安全を示せれば、例外に当たる余地はあります。
高さ2m以下の擁壁は、建築基準法の確認の対象ではありません。そのため、検査済証がないのは珍しくありません。がけ条例のがけも高さ2mを超えるものなので、擁壁と斜面を合わせて2m以下なら、範囲の計算は不要です。
書類は、次の順にたどります。
1. 売主の手元を確かめる:家を建てたときの確認済証・検査済証、分譲時の図面、擁壁工事の書類
2. 柏市の記録を確かめる:建築計画概要書(確認を受けた建物の概要の書類)等の写しや、建築確認の証明(いずれも400円)。擁壁の記録まで載っているかは、物件ごとに違う
3. 開発許可の記録を見る:分譲地なら、開発登録簿(開発許可の内容を記した台帳)の写し(1枚470円)
たとえば、昭和の終わりごろに分譲された住宅地で、擁壁の書類だけが見当たらないとします。開発登録簿には、完了検査で許可どおりと認められた旨も書き添えられます(都市計画法第47条)。分譲のときに開発許可を受けていれば、ここから検査の経緯をたどれることがあります。
書類が見つからない、どこから調べればいいか分からない。そんなときは、物件の住所と販売図面を添えてお知らせください。晃南土地が窓口となり、必要に応じて設計や調査の専門家と連携しながら、確かめる順番を一緒に整理します。柏市の擁壁のある土地について「晃南土地」に相談する
古い擁壁をつくり直すときの、柏市での手続き
この章の要点
- 許可・検査済みの擁壁を同じ形でつくり替える場合も、高さ2m超なら建築基準法の手続きが要る
- 許可を受けていないブロック造などは「ない」ものとして扱われ、盛土規制法の許可が要る
- 許可を受けずに高さ2m超の擁壁を壊すときは、工事の14日前までに届出が要る
要る手続きは、今ある擁壁の素性と、つくり替えの中身で変わります。柏市の許可基準での扱いは、次のとおりです。
| つくり替えの中身 | 柏市の基準での扱い |
|---|---|
| 許可・検査済みの擁壁を、同じ位置・形・高さでつくり替える(高さ2m超) | 盛土規制法の許可は要らない。建築基準法の手続き(工作物の申請)と、今の擁壁を壊す前の届出が要る |
| 許可を受けていないブロック造などをつくり替える | 今の擁壁は「ない」ものとして扱い、新たに盛土規制法の許可が要る |
| 練積みの擁壁を、L型などの垂直な擁壁に替える | 壁が立つぶん後ろに盛土が生じるため、1mを超えれば許可が要る |
| L型などの擁壁を、練積みの擁壁に替える | 壁が寝るぶん後ろを削るため、2mを超えれば許可が要る |
高さ2mを超える擁壁を壊すときは、届出が要ります。期限は、工事に着手する日の14日前までです(盛土規制法第21条第3項、同法施行令第26条)。つくり替えで盛土規制法の許可を受ける場合は、この届出の対象から外れます。
役所の手数料は、工事費に比べれば小さな額です。柏市に申請する場合、工作物としての確認の審査が19,000円、完了検査が21,000円です。盛土規制法の工事許可の申請は、面積500㎡以下で14,000円です。設計や申請を専門家に頼む費用は、別にかかります。
土地の持ち主の責任も、知っておきたい点です。盛土規制法は、規制区域内の土地の所有者などに、土地を常に安全な状態に保つよう努めることを求めています。区域の指定より前に造成された土地も含みます(第22条第1項)。
災害を防ぐために必要と認められれば、市は擁壁の設置や改造を勧告できます(第22条第2項)。災害のおそれが大きい場合は、工事を命じることもできます(第23条)。古い擁壁のある土地を買うことは、その擁壁を保つ立場を引き継ぐことでもあります。
建て替えの計画を立てる段階で、積み足したブロックに許可がないと分かることもあるでしょう。その場合は、擁壁のつくり替えを含めた費用で、建て替えるかどうかを考え直すことになります。
擁壁のつくり直し費用はいくら?国の資料の目安と計算例
この章の要点
- 国の資料(2022年)では、高さ3mの擁壁をつくり直す費用は、10mあたり240万〜550万円程度
- 補強なら10mあたり360万〜2,100万円程度、表面を覆う補修なら30万〜110万円程度と幅がある
- つくり直しには擁壁の前後に作業の場所が要り、家が近いと工事の選び方が変わる
国の目安は、国土交通省の「宅地擁壁の健全度判定・予防保全対策マニュアル」にあります。高さ3mの擁壁、諸経費率60%という仮定で出した概算の工事費です。
資料は2022年4月のもので、その後の資材費や人件費の変動は反映されていません。撤去や設計の費用を含むかも、表には書かれていません。地盤や道路の幅でも金額は上下するため、見積もりでは内訳まで確かめてください。
| 工事の種類 | 工法 | 概算工事費(10mあたり) |
|---|---|---|
| つくり直し | 重力式コンクリート擁壁 | 240万円程度 |
| つくり直し | 鉄筋コンクリートL型擁壁(工場製品・国の認定品) | 320万円程度 |
| つくり直し | 練石積み造擁壁 | 550万円程度 |
| 補強 | 地山補強土工法 | 360万円程度 |
| 補強 | 杭工法(仮設工は別) | 370万円程度 |
| 補強 | グラウンドアンカー工法 | 550万円程度 |
| 補強 | 網状鉄筋挿入工法 | 900万円程度 |
| 補強 | 固結工法(地盤を固める) | 2,100万円程度 |
| 補修 | 吹付工法(コンクリートを吹き付ける) | 30万円程度 |
| 補修 | 法枠工法(格子状の枠をつくる) | 90万円程度 |
| 補修 | 沿打工法(コンクリートを打ち足す) | 110万円程度 |
| 補修 | 目地詰め工法(ひび割れを埋める) | 1mあたり1.6万円程度 |
仮に、間口12mの土地の道路側に、高さ3mの古い擁壁があるとします。10mあたり240万〜550万円を、長さに比例させて当てはめます。
| 条件(高さ3m) | 長さ | 費用の目安 |
|---|---|---|
| 間口12mの1面 | 12m | 約290万〜660万円 |
| 角地で2面(12m+8m) | 20m | 約480万〜1,100万円 |
単純な比例計算なので、実際の金額は条件で変わります。それでも、土地の値段の差を打ち消すほどの大きさです。周りより300万円安い土地でも、擁壁のつくり直しが要れば、総額では割高になることもあります。
補修は安く見えますが、国の資料では、傷みの進行を止めたり、傷む前の状態に戻したりする工事です。基準に合う擁壁と同等以上の働きを持たせるのは、つくり直しか補強です。どこまでの工事が要るかは、擁壁の傷み具合の判定(健全度の判定)をもとに選びます。
作業の場所も要ります。国の資料の目安では、鉄筋コンクリートや重力式でつくり直すなら、擁壁の前に2m程度以上、後ろに2〜7m程度以上です。練石積みなら、前に2〜3m、後ろに3〜4m程度以上です。
擁壁のすぐ上に家が建っていると、後ろの作業の場所が取れません。国の資料も、つくり直しの場所が取れないときは、補強の工法を検討する流れを示しています。家の建て替えと合わせてつくり直すか、場所を取らない補強を選ぶか、という比べ方になります。
がけの上の土地なら、家の基礎を深くして、がけ条例の例外に当てはめる方法もあります。ただし擁壁そのものの傷みは残るため、擁壁の点検や補修は別に考えます。
高低差のある土地を売るときに、価格や売れ行きに響く点
この章の要点
- 買い手は、建て替えのときの制限と擁壁の費用を、価格に織り込もうとする
- 柏市の土地の重要事項説明では、盛土規制法の制限が説明の対象になる
- 書類と擁壁の状態を先にそろえるほど、買い手は判断しやすくなる
今は買う立場でも、ここでそろえる書類は、いずれ売るときにも役に立ちます。
買い手が気にする点は、主に3つです。がけ条例の制限を受けるか。擁壁をそのまま使えるか。使えないなら、いくらかかるか。これが読めないと、買い手は費用を大きめに見込み、価格の交渉に入りやすくなります。
よくあるのは、買い手から「擁壁の検査済証はありますか」と聞かれ、そこで初めて書類を探し始める場面です。
不動産会社が契約の前に行う重要事項説明(取引の大事な点を書面で説明する手続き)にも、関係する項目があります。
| 説明の項目 | 柏市の土地での扱い |
|---|---|
| 盛土規制法による制限 | 柏市は全域が宅地造成等工事規制区域のため、説明の対象になる |
| 土砂災害警戒区域・特別警戒区域 | 区域内にあれば、その旨や制限を説明する |
売主が知っている擁壁の傷みは、買主に伝えておくことが大切です。引き渡しのあとに、契約の内容と違う状態が見つかったとします。その場合、売主が修補や代金の減額を求められることがあります(民法第562条・第563条)。
売る前の準備は、次の順に進めると、買い手の判断材料がそろいます。
1. 擁壁の書類を探す(検査済証、開発許可の記録、分譲時の図面)
2. 擁壁の写真を撮り、ひび割れや水抜き穴の状態を記録する
3. 必要に応じて、専門家に擁壁の状態を見てもらう
価格の決め方には、大きく3つの道があります。擁壁の費用を見込んだ価格で売り出す。直してから売る。不動産会社の買取りで、早めに手放す。直してから売る方法は、工事費をそのまま価格に上乗せできるとは限りません。
土地の査定で見られる条件は、『柏市で土地の査定を受ける方へ|査定額を左右する条件と準備』で扱っています。晃南土地は買取りも手がけているため、仲介で売る場合と買取りの場合を、並べて比べるお手伝いができます。
道路より低い土地・高い土地で、契約の前に確かめること
この章の要点
- 道路より高い土地は、擁壁と駐車場・階段の工事、がけの上の制限を確かめる
- 道路より低い土地は、雨水や排水の流れ、がけの下の制限を確かめる
- 擁壁が境界のどちら側にあり、誰のものかも契約の前に確かめる
同じ高低差でも、道路より高いか低いかで、気をつける点が変わります。
| 敷地の位置 | 主に確かめること |
|---|---|
| 道路より高い | 擁壁の書類と状態。駐車場を道路の高さに掘り込む工事。階段の位置。奥にがけがあれば、がけの上の制限 |
| 道路より低い | 道路から雨水が流れ込まないか。下水へ自然に流せる高さか(ポンプが要るか)。後ろにがけがあれば、がけの下の制限 |
| 隣の土地と差がある | 擁壁がどちらの敷地にあるか。隣の擁壁に、自分の土地が支えられていないか |
道路から数段下がった敷地を見に行くと、大雨のときに道路の水がどちらへ流れるかが気になるものです。柏市は、下水道などが雨水を流しきれずにあふれる「内水」の想定を、web版の防災・ハザードマップで公開しています。土砂災害警戒区域も載っていますが、反映は2025年12月26日の告示分までです。新しい指定は、千葉県の一覧で確かめます。
擁壁が境界のどちら側にあるかは、測量図や境界の確認書で分かることがあります。つくり直しや修繕の費用を誰が持つかに関わるため、あいまいなまま契約しないことが大切です。
契約の前に確かめたい点です。
- □ がけの高さと、上端・下端の位置(測量図)
- □ がけ条例の範囲に、建てたい家が入るか
- □ 擁壁の種類(練積み・コンクリートか、空石積み・増し積み・2段か)
- □ 擁壁の検査済証、または開発許可の記録
- □ 擁壁が境界のどちら側にあり、誰のものか
- □ 土砂災害警戒区域や、市の既存盛土の一覧に入っていないか
- □ つくり直しが要る場合の見積もりと、総額での比較
つくり直しや調査が要りそうなら、その扱いを契約の条件として売主と話し合っておきます。費用を価格に反映する、調査の結果しだいで契約を見直せるようにする、といった取り決めです。決めたことは、特約として契約書に残します。
前の道の幅や私道の扱いは、『柏市で土地や中古住宅を買う方へ|道路の種類とセットバックの確認』で整理しています。相場より安い土地の理由は、『柏市で安い土地を探す方へ|相場より安い理由と買う前の確認点』をご覧ください。
現地で撮った擁壁の写真を見せながら、何から確かめればよいかを聞いてみたい方もいらっしゃると思います。売買部とつながるLINEなら、写真を添えて手軽にお送りいただけます。晃南土地のLINEで売買部に相談する
よくある質問
Q. 古い石積みの擁壁がある土地は、買っても大丈夫ですか?
A. 石積みというだけで、買ってはいけない土地とは限りません。すき間をコンクリートで固めた練積みなら、基準のある形式です。固めずに積んだ空石積みや、ブロックを積み足した擁壁は、国の資料で宅地に適さないとされています。種類・書類・傷みの3点を確かめてから判断してください。
Q. 擁壁をつくり直す費用は、どれくらいかかりますか?
A. 国の資料(2022年)では、高さ3mの擁壁で10mあたり240万〜550万円程度が目安です。重力式コンクリートが低め、練石積みが高めと、工法で差があります。地盤や作業の場所で金額は変わるため、見積もりで確かめることが前提です。
Q. がけ条例は、柏市だけの決まりですか?
A. いいえ、千葉県の条例(千葉県建築基準法施行条例第4条)で、柏市の土地にも当てはまります。高さ2mを超え、30度を超えて傾く「がけ」の近くで、居室のある建物の位置を制限するものです。
Q. 道路より低い土地で、気をつけることは何ですか?
A. 雨水の流れと、排水の高さです。道路から水が流れ込みやすくないか、下水へ自然に流せる高さかを確かめてください。後ろにがけがある場合は、がけの上端から高さの2倍の範囲で、居室のある建物の位置が制限されます。
Q. 擁壁の書類がそろっていなくても、相談できますか?
A. はい、書類がそろう前の段階からご相談いただけます。物件の住所や販売図面があれば、記録のたどり方を順番から一緒に整理します。擁壁の安全性の判断が要る場面では、晃南土地が窓口となり、専門家と連携して確かめる段取りを整えます。
まとめ
高低差のある土地は、土地代だけでなく、擁壁と家の位置の制限まで含めて比べることが大切です。
- がけ条例は柏市にも当てはまり、がけの上は下端から高さの1.5倍、下は上端から2倍の範囲に居室のある建物を建てられない
- 安全な擁壁があれば例外になるが、検査済証などの書類と、傷みの補修の両方が問われる
- 空石積み・増し積み・2段擁壁などは、国の資料で宅地の擁壁に適さないとされる
- 柏市は全域が盛土規制法の規制区域で、擁壁のつくり替えや撤去に許可や届出が要ることがある
- つくり直しの費用は、高さ3mの擁壁で10mあたり240万〜550万円程度が国の目安(2022年の資料)
擁壁と高さの条件を整理したい方は、柏市の高低差のある土地について「晃南土地」に問い合わせるからご連絡ください。
測量図や写真を見ながら対面で話したい方は、総合不動産「晃南土地」我孫子店への来店予約をご利用いただけます。
まずは気軽に聞いてみたい方は、晃南土地のLINEで売買部に相談するからメッセージをお送りください。
なお、晃南土地は2026年12月に、柏駅から徒歩6分の柏市中央町に柏支店を開業する予定です。開業までの来店でのご相談は、我孫子店で承っています。所在地は、「晃南土地」柏支店のページでご覧いただけます。
候補の土地がまだ一つもなくても、構いません。擁壁と条例の読み方を整理するところから、一緒に進めます。
企画構成・文/晃南土地 編集部
千葉県我孫子市を拠点に、1991年から地域の不動産に携わる晃南土地株式会社の編集部です。売買・賃貸・賃貸管理・買取り・リノベーションを一社で手がける立場から、柏・我孫子エリアの住まいと不動産の情報を、分かりやすくお届けします。
参考にした公的データ・情報
- わが家を建てるための法律知識-がけについて/千葉県
- 千葉県建築基準法施行条例とその解説2025年版 第2章(第3条の2-第5条)/千葉県
- がけ条例(よくある質問と回答)/柏市
- 宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法)/柏市
- 既存盛土一覧表(盛土規制法に基づく基礎調査)/柏市
- 柏市開発行為等審査基準 宅地造成及び特定盛土等規制法に関する工事の許可基準/柏市
- 許可申請手数料等早見表/柏市
- 確認申請・許可・認定等に係る申請手数料の一覧/柏市
- 柏市文化財保存活用地域計画 第1章 柏市の概要/柏市
- 柏市web版防災・ハザードマップ/柏市
- 土砂災害警戒区域等の一覧/千葉県
- 宅地擁壁の健全度判定・予防保全対策マニュアル/国土交通省
- 我が家の擁壁チェックシート(案)/国土交通省
- 建築基準法/e-Gov法令検索
- 建築基準法施行令/e-Gov法令検索
- 宅地造成及び特定盛土等規制法/e-Gov法令検索
- 宅地造成及び特定盛土等規制法施行令/e-Gov法令検索
- 都市計画法/e-Gov法令検索
- 宅地建物取引業法施行令/e-Gov法令検索
- 宅地建物取引業法施行規則/e-Gov法令検索
- 民法/e-Gov法令検索