アパートの提案書、そのまま契約して大丈夫?|柏・我孫子の地主さんが見るべき6か所
打ち合わせのあと、テーブルに残された厚い提案書の表紙には「30年一括借上げ」の文字。収支表の最後の行は「30年間の手取り合計 約9,700万円」です。駐車場や畑のままにしておくより、ずっと良い話に見えます。「この数字のとおりなら、建ててもいいのかもしれない」「でも、30年後まで本当にこの家賃で貸せるのだろうか」。
千葉県柏市や千葉県我孫子市でも、こうした提案書を前に迷っている地主の方がいらっしゃると思います。そこで、我孫子市に本社を置く晃南土地の編集部が、契約の前に確かめたい点を順にまとめました。よりどころにしたのは、国土交通省のガイドラインや建設業法などの公的な資料です。晃南土地は1991年から地域の不動産に携わり、売買から賃貸管理、リノベーションまでを一社で扱っています。
先に答えをお伝えします。提案書の数字をそのまま信じて契約するのは、避けたほうが安心です。提案書は、建設会社が置いた前提でうまくいった場合を計算した、一つの試算だからです。前提を確かめ直し、納得できたら契約へ進む。この順番なら、提案を最初から疑ってかからなくても大丈夫です。
この記事で分かることは、次の3つです。
- 見積り・家賃・30年の収支で、数字を確かめ直す場所と計算のしかた
- 一括借上げ(サブリース)と借入の契約で、読んでおきたい条項
- ほかの会社の意見を、同じ条件で聞く方法
建てたあとの家賃や管理の見通しを、賃貸管理の現場の目でも確かめておきたい方は、お気軽にご相談ください。建てたあとの家賃と収支の見通しを「晃南土地」に相談する
アパートの提案書、そのまま契約して大丈夫?確かめる場所は6つ
この章の要点
- 提案書は、建設会社が置いた前提で計算した「事業計画の案」
- 工事の請負・一括借上げ・借入の3つの契約が、同じ時期に進む形になりやすい
- 確かめる場所は、見積り・土地の決まり・家賃・修繕と空室・借上げの条項・借入の6つ
アパートの提案書には、建物のプラン、工事の見積り、想定の家賃、30年ほどの収支表がまとめられています。一括借上げや借入の案が添えられていることもあります。どの数字も、前提が変われば結果が変わります。
提案書を読むときに知っておきたいのは、結ぶ契約が一つではないことです。
| 契約 | 相手 | 主に決まること |
|---|---|---|
| 工事の請負契約 | 建設会社 | 建物の内容、工事代金、工期、代金が変わるときの決まり |
| 一括借上げの契約 | サブリース会社 | 借上げ家賃、見直しの時期、家賃が出ない期間、修繕の負担、解約 |
| 借入の契約 | 金融機関 | 借入額、金利、返済期間、担保と保証 |
工事の契約書と借上げの申込書が、同じ打ち合わせの席でそろって出てくることも珍しくありません。
国土交通省のガイドラインは、借上げを前提に建物を建てる場合の注意点を挙げています。工事の請負契約を結んだあとで借上げの不利な条件に気づいても、その時点ですでに多額の債務が生じている、という指摘です。だからこそ、3つの契約の中身を、最初の契約の前にそろえて読むことが大切です。
確かめる場所は、次の6つです。
1. 見積りの内訳(本体・付帯・諸費用)
2. 畑や駐車場の土地にかかる決まり
3. 家賃設定の根拠
4. 30年の修繕と空室を入れた収支
5. 一括借上げの家賃の見直しと解約の条項
6. 借入と、金利が上がったときの返済
6つを確かめ、計算し直しても納得できる計画なら、契約へ進んでかまいません。確かめた結果、条件を変えてもらう、規模を見直す、建てないと決める、という答えもあり得ます。
そもそもアパートと駐車場のどちらが土地に向くかは、『土地活用は駐車場とアパートどっち?|柏の土地で収支を比べる』で比べています。
アパート経営の失敗例は?きっかけは提案書の「前提」にある
この章の要点
- 失敗のきっかけは、家賃の下落・空室・修繕・借上げ家賃の減額・金利・追加の工事費など
- どれも、提案書の前提をどう置いたかで見え方が変わる
「アパート経営 失敗」と調べると、借金だけが残ったという話も目に入ります。ただ、失敗のきっかけを分けてみると、提案書の段階で確かめられる前提が並びます。
| よくある場面 | 提案書で見る場所 | この記事の章 |
|---|---|---|
| 2回目の募集から、家賃を下げないと部屋が埋まらない | 家賃の想定と、その根拠 | 家賃設定の根拠 |
| 10年を過ぎて、外壁や給湯器の工事が重なる | 収支表の修繕費の行 | 30年の修繕費 |
| 借上げ家賃の見直しで、手取りが減る | 借上げの契約の家賃改定の条項 | 一括借上げの契約 |
| 金利が上がり、返済が増える | 金利と、上がったときの試算 | 借入と金利 |
| 着工後に、地盤改良や外構の追加費用が出る | 見積りの付帯工事と「別途」の項目 | 見積りの内訳 |
| 帳簿は黒字なのに、手元のお金が足りない | 税金と、元金の返済の扱い | 30年の収支の計算し直し |
表は特定の誰かの話ではなく、賃貸経営で起こりやすい場面を並べたものです。
国土交通省のガイドラインは、サブリース会社などの広告での誇大な表示の例を挙げています。その一つが、家賃の見直しがあるのに、その前提(稼働率や家賃の変動)を示さずに長期の収支を載せることです。表面利回りか実質利回りかをはっきりさせない表示も、例に挙がっています。
提案書の収支表でも、前提が書かれているかを最初に見てください。手元に置いておきたい問いは、次の3つです。
- 満室が何年続く前提か
- 家賃は、何年目まで同じ前提か
- 修繕費は、何年目からいくら入っているか
利回りの種類と計算のしかたは、『アパートの利回りはどう計算する?|表面・実質利回りと収支の見方』で扱っています。
見積りの内訳は「本体・付帯・諸費用」に分けて確かめる
この章の要点
- 総額だけでなく、建物本体・付帯工事・諸費用の3つに分けて比べる
- 建設業法では、材料費などの内訳を書いた見積書を、求めれば契約までに受け取れる
「総額が予算に収まっているなら、細かい内訳まではいいか」。そう思いたくなるところですが、提案書の工事費は、総額の1行にまとめられていることもあります。比べるときは、3つに分けて見ます。総額が同じでも、何が含まれているかで、あとから出ていくお金が変わるからです。
| 区分 | 主な中身 | 確かめたいこと |
|---|---|---|
| 本体工事 | 基礎・構造・屋根・外壁・内装・住宅設備 | 床材や設備の品番など、仕様の水準 |
| 付帯工事 | 地盤調査と地盤改良、給排水・ガスの引き込み、外構・駐車場・駐輪場・ゴミ置き場、造成や舗装の撤去 | 「別途」や「概算」のままになっていないか |
| 諸費用 | 設計と建築確認の費用、登記、印紙税、不動産取得税、火災保険、借入の手数料や保証料 | 総事業費に含まれているか |
見積書に「一式」「別途」とある項目は、中身と金額の目安を聞いておきます。たとえば畑だった土地では、地盤調査の結果が出るまで、地盤改良が要るか分からないことがあります。その場合も、要るときの金額の幅を聞いておくと、総額の上限が読めます。
見積書の中身は、法律の上でも求めることができます。建設業法の決まりのうち、地主の側で使えるものを表にまとめました。
| 建設業法の決まり | 地主の側でできること |
|---|---|
| 建設会社は、材料費や労務費などの内訳を書いた見積書を作るよう努め、求められたら請負契約の成立までに渡す(第20条第1項・第4項) | 「一式」が多い見積りなら、契約の前に内訳つきの見積書を受け取る |
| 価格の変動で工事代金を変えるときの決まりと計算方法を、契約書に書く(第19条第1項第8号) | 契約書の案で、資材が値上がりしたときの扱いを読む |
| 資材の高騰などのおそれがあれば、建設会社が契約までに知らせる(第20条の2第2項) | 知らせを受けたら、総額がどこまで動くかを聞く |
| 注文者は、地盤の沈下などのおそれがあれば、契約までに伝える(第20条の2第1項) | 畑の来歴で気になることを、早めに伝える |
諸費用の中では、税金も見落としやすい費用です。工事の請負契約書には印紙税がかかります。2027年3月31日までに作る契約書は、軽減された額になります。契約金額が5,000万円を超え1億円以下なら3万円、1億円を超え5億円以下なら6万円です。
建物が完成すると、千葉県の不動産取得税もかかります。新築の住宅で1戸(1区画)の床面積が40㎡以上240㎡以下なら、申告すると価格から1,200万円が差し引かれます。1戸が40㎡に届かないワンルームなどは、この軽減の対象になりません。
畑や駐車場の土地で、建てる前に確かめる決まり
この章の要点
- 市街化調整区域では、アパートを建てられる場面がかなり限られる
- 市街化区域の畑は、農地以外にする前に農業委員会への届出が要る
- 生産緑地や、相続税の納税猶予を受けている畑は、手続きと税の影響を先に確かめる
「自分の土地なのだから、何を建てるかは自由だろう」。畑の場合は、そうとは限りません。畑や駐車場として使ってきた土地は、建物を建てる前提で手続きが整っていないことがあります。
| 土地の状態 | 主な決まり | 確かめること |
|---|---|---|
| 市街化調整区域にある | 都市計画法で「市街化を抑制すべき区域」とされる | アパートを建てられる条件に当たるか |
| 市街化区域の畑 | 農地法第4条(あらかじめ農業委員会へ届け出る) | 届出の時期が、提案書の工程に入っているか |
| 生産緑地に指定された畑 | 生産緑地法第8条(建物の新築には市町村長の許可が要り、許可は農業用の施設などに限られる) | 市への買取りの申出(第10条)など、制限を外す手続きを進められる時期か |
| 相続税の納税猶予を受けている畑 | 租税特別措置法第70条の6など | 転用すると、猶予された税と利子税を納めることになる |
| 月極駐車場として貸している | 利用者との駐車場の契約 | 解約の予告期間と、着工までの日程 |
土地の区域の調べ方は、『相続した土地が市街化調整区域だったら|柏での売り方と使い方』でまとめています。
気をつけたいのは、相続税の納税猶予を受けている畑です。国税庁の資料では、特例を受けた農地の20%を超える面積で転用や譲渡などをすると、猶予された税額の全部と利子税を納めます。20%以下でも、その割合に応じた税額と利子税がかかります。
どの部分に建てるか、残りを農地として続けるかで、税の影響は変わります。具体的な判断は、税理士などの専門家と連携して確かめます。生産緑地と納税猶予のしくみは、『相続した農地・生産緑地をどうする?|柏で売る・活かす選択肢』で詳しく扱っています。
家賃設定の根拠は、周辺の「成約」家賃と比べる
この章の要点
- 提案書の家賃は、比べた物件と、それが募集中の家賃か成約した家賃かを確かめる
- 新築の最初の募集だけでなく、2回目以降の募集で比べられる相手も考える
- 2023年の調査では柏市の空き家は21,310戸。新しい部屋は既存の部屋とも入居者を取り合う
収支表のいちばん大きな数字は、家賃です。家賃の想定が月5,000円違うと、10戸で年60万円、30年では1,800万円の差になります。
提案書の家賃を見るときは、根拠の資料を出してもらいます。確かめたいのは、次の点です。
| 確かめること | 理由 |
|---|---|
| 比べた物件の一覧(駅・徒歩分数・間取り・広さ・築年数) | 条件の違う物件と比べていないか |
| 募集中の家賃か、成約した家賃か | 募集中の家賃は、実際に決まった家賃より高いことがある |
| いつの時点の家賃か | 古い資料だと、いまの相場とずれる |
| 共益費や駐車場代を含むか | 家賃に含めて、高く見せていないか |
| 新築時の家賃か、10年後も同じ想定か | 2回目以降の募集では、築年数のある部屋と比べられる |
国土交通省のガイドラインには、誇大広告の例も挙がっています。根拠のない家賃で「周辺相場よりも高く借り上げます」とうたう表示です。家賃の根拠を聞くのは、遠慮するような質問ではありません。
比べる相手は、場所で変わります。柏駅や柏の葉キャンパス駅、我孫子駅の近くと、駅からバスを使う地域を比べてみてください。同じ間取りでも、家賃や入居者の顔ぶれが違ってきます。よくあるのは、駅から歩いて15分を超える畑に建てる計画で、比べた物件が駅に近い新築ばかりという場面です。
総務省の2023年の住宅・土地統計調査では、柏市の住宅215,820戸のうち、空き家は21,310戸(9.9%)でした。我孫子市は62,940戸のうち5,880戸(9.3%)です。柏市の空き家のうち1万6千戸あまりは、賃貸用・売却用・別荘などの空き家に分類されています。入居者を募集中の賃貸の部屋も、ここに含まれます。新しく建てる部屋は、こうした部屋とも比べられることになります。
計画中の間取りと場所で、どのくらいの家賃が見込めるか。我孫子を拠点に入居者の募集と管理をしている立場から、周りの部屋の状況をもとに一緒に見ることができます。柏・我孫子で建てる部屋の家賃の見立てを「晃南土地」に聞く
30年の修繕費は、いつ・いくら出ていくかを表にする
この章の要点
- 国のガイドブックの例では、木造10戸の30年の修繕費は約2,160万円
- 引き渡しから10年は構造と雨漏りに建設会社の責任があるため、11年目以降の支出を見落としやすい
「新築なのだから、しばらく修繕費はかからないはず」。そう思いがちですが、修繕費は毎年同じ額が出ていくわけではありません。10年を過ぎたころから、大きな工事が何年かおきに重なります。
国土交通省の「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」には、木造10戸の例があります。1LDK〜2DKの部屋で、修繕の時期と費用のイメージを示したものです。
| 時期 | 主な工事 | 費用の目安(建物全体) |
|---|---|---|
| 5〜10年目 | ベランダ・階段・廊下の塗装、室内設備の修理、排水管の洗浄 | 約90万円 |
| 11〜15年目 | 屋根・外壁の塗装、給湯器などの修理・交換 | 約640万円 |
| 16〜20年目 | 室内設備の修理、給排水管の洗浄・交換、外構の修繕 | 約230万円 |
| 21〜25年目 | 屋根・外壁の塗装・葺き替え、浴室設備などの修理・交換 | 約980万円 |
| 26〜30年目 | 室内設備の修理、給排水管の洗浄・交換、外構の修繕 | 約230万円 |
30年の合計は、1戸あたり約216万円、10戸で約2,160万円です(ガイドブックの表示。端数の関係で各時期の合計とは一致しません)。ガイドブックは、物件によって時期や金額は異なるとしています。金額は作成時点のもので、いまの工事費とは違っている可能性もあります。
引き渡しから10年間、建設会社は、建物の構造の主な部分と雨水の浸入を防ぐ部分の欠陥について責任を負います。住宅の品質確保の促進等に関する法律第94条の定めです。この期間は大きな出費が少なく見えるため、収支表の最初の10年だけで判断しやすくなります。
提案書の収支表では、修繕費の行があるか、あるなら何年目にいくら入っているかを見ます。毎年一定額を積み立てる形なら、30年の合計が上の表の金額に届くかを比べてみてください。
維持費の項目全体は、『アパート経営の維持費はいくら?|税金・保険・修繕・管理料の一覧』に一覧でまとめています。30年たったあとの建て替えや売却の考え方は、『築40年のアパートどうする?|建て替え・リノベ・売却を比べる』をご覧ください。
空室と家賃の下落を入れて、30年の収支と利回りを計算し直す
この章の要点
- 提案書の前提(満室・家賃据え置き・修繕なし)を、仮の条件に置き換えて計算する
- 仮の例では、30年の手取りは約9,700万円から約3,400万円まで下がる
- 21年目以降は、年平均で手出しになる計算になった
ここからは、仮の数字で計算してみます。冒頭の提案書を、木造2階建て・1LDK 10戸の計画に置き換えたものです。実在の提案書や物件の数字ではありません。
| 項目 | 提案書の前提 | 計算し直しの前提 |
|---|---|---|
| 総事業費 | 1億2,000万円(本体1億円・付帯1,200万円・諸費用800万円) | 同じ |
| 借入 | 1億1,000万円・30年・金利2.0%(元利均等) | 同じ |
| 家賃 | 月8万円×10戸で年960万円。30年同じ | 10年ごとに5%下がる |
| 入居 | 30年間、満室 | 1〜10年目95%、11〜20年目90%、21〜30年目85% |
| 運営費(管理料・税・保険など) | 年150万円 | 同じ |
| 修繕費 | 入っていない | 国のガイドブックの木造10戸の例を、10年ごとに平均 |
返済は、毎月の返済額が同じになる元利均等で計算しました。借入1億1,000万円を30年・金利2.0%で返すと、年約488万円です。家賃960万円を総事業費1億2,000万円で割った表面利回りは、8.0%になります。
計算の結果は、次のとおりです(年平均・万円)。
| 期間 | 家賃収入 | 運営費 | 修繕費 | 返済 | 手残り |
|---|---|---|---|---|---|
| 提案書(毎年) | 960 | 150 | 0 | 488 | 322 |
| 1〜10年目 | 912 | 150 | 9 | 488 | 265 |
| 11〜20年目 | 821 | 150 | 87 | 488 | 96 |
| 21〜30年目 | 736 | 150 | 121 | 488 | −23 |
30年の合計で比べると、提案書の約9,700万円に対し、計算し直すと約3,400万円です。差の大部分は、11年目以降に出てきます。
21〜25年目は、屋根・外壁の工事が重なる時期です。平均すると年23万円ほどの手出しですが、工事をまとめて行う年だけを見ると、手元から900万円近くを出す計算になります。
運営費は30年同じとしましたが、実際には動きます。たとえば新築の建物には、条件を満たす部屋について、固定資産税が一定の年数だけ2分の1になる減額があります。これが終わると、税額は上がります。
この計算には、所得税と住民税も入っていません。借入の元金の返済は経費になりません。一方、建物の代金を年数に分けて経費にする減価償却費は、木造の住宅用なら税法上の耐用年数22年で終わります。帳簿の利益と手元のお金がずれる点は、先に挙げた利回りの記事で説明しています。
大切なのは、提案書の前提と、自分で置き直した前提を、同じ表に並べてみることです。
提案書の収支表を手元に、家賃や入居の前提をどう置けばよいか聞いてみたい方もいらっしゃると思います。収益の見通しだけのご相談でも承っています。アパートの収益の見通しを「晃南土地」の賃貸管理に相談する
一括借上げ(サブリース)の契約は、家賃の見直しと解約の条項を読む
この章の要点
- 「30年一括借上げ」でも、借上げ家賃は見直され、減額されることがある(借地借家法第32条)
- 重要事項の説明から契約までは、1週間程度あけることが望ましいとされている
「一括借上げなら、空室の心配はしなくていい」。提案の場で、そう受け止める方もいるかもしれません。一括借上げ(サブリース)は、サブリース会社が建物をまとめて借り、入居者に貸す仕組みです。地主の方は、入居者ではなくサブリース会社から家賃を受け取ります。
この契約は、賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(賃貸住宅管理業法)で「特定賃貸借契約」と呼ばれます。法律は、サブリース会社に、契約の前に書面を渡して重要事項を説明することを求めています(第30条)。
提案をした建設会社も、この法律と無関係ではありません。法律は、サブリース会社が勧誘を行わせる者を「勧誘者」とし、誇大広告や不当な勧誘を禁じています(第28条・第29条)。国土交通省のガイドラインは、勧誘者にあたる例を挙げています。建設会社が、サブリース会社の資料を使って賃貸事業計画を説明する場合などです。
「30年一括借上げ」と書かれていても、30年間同じ家賃が続くとは限りません。借地借家法第32条は、経済事情の変動や、近くの同じような建物の家賃との比較で家賃が不相当になったときの決まりです。その場合、契約の条件にかかわらず、家賃の減額を求められるとしています。
提案書の収支表が、借上げ家賃の見直しを入れているかを確かめてください。
| 条項 | 確かめること |
|---|---|
| 借上げ家賃と見直し | 最初の家賃、見直しの時期と方法、収支表に反映されているか |
| 家賃が出ない期間(免責期間) | 新築当初など、借上げ家賃が支払われない期間があるか |
| 修繕の負担 | 大規模修繕や原状回復をどちらが負担するか、工事の依頼先の指定があるか |
| 更新と解約 | サブリース会社から解約できる条件と、オーナーから解約できる条件 |
オーナーの側から解約や更新の拒絶をするには、借地借家法第28条の「正当の事由」が要るとされます。貸す側と借りる側が建物を使う必要性などを比べて判断される事情のことです。ガイドラインは、勧誘のときに告げないと不当な勧誘にあたる例も挙げています。家賃見直しの協議で合意できなければ契約が終わる条項や、一定期間ごとの修繕に応じないと更新しない条項です。
ガイドラインは、重要事項の説明から契約まで、1週間程度あけることが望ましいとしています。建設の勧誘と一緒に借上げを勧める場合は、勧誘の時点でリスクを書いた書面を渡して説明することが望ましいともしています。工事の請負契約を結ぶ前に、借上げの重要事項説明書を受け取っておくと安心です。
契約前の注意点は、『柏でサブリースを検討中の方へ|契約前に知っておきたい注意点』にまとめています。減額を通告されたときの考え方は、別の記事で扱いました。『サブリースの減額・解約を通告されたオーナーへ|「家賃保証」なのに減額!? 仕組みと対応を解説』をご覧ください。
借上げを使わず、管理会社に管理を任せる形で始める方法もあります。この形では、入居者が払う家賃から管理料を差し引いた額がオーナーに入る一方、空室の影響はオーナーが直接受けます。どちらが合うかは、空室への備えと手取りのどちらを重く見るかで変わります。
アパートの借入で失敗しないために、金利が上がったときの返済を出す
この章の要点
- 日本銀行は2026年6月と9月に政策金利を引き上げ、9月18日に1.25%程度とした
- 仮の例(1億1,000万円・30年)では、金利が1%上がると年の返済は約69万円増える
- 返済が家賃収入の何割を占めるかを見て、空室や修繕が重なる年に耐えられるか確かめる
日本銀行は、2026年6月16日に政策金利(無担保コールレートの誘導目標)を1.0%程度へ引き上げました。9月18日には、さらに1.25%程度へ引き上げています。変動金利の借入は、金融機関が決める基準の金利に合わせて見直されます。その基準の金利は、政策金利の動きの影響を受けることがあります。
収支を計算し直した仮の例で、金利だけを変えると次のようになります。
| 金利 | 毎月の返済 | 年間の返済 | 2.0%との差(年) |
|---|---|---|---|
| 2.0% | 約40.7万円 | 約488万円 | (基準) |
| 2.5% | 約43.5万円 | 約522万円 | 約34万円 |
| 3.0% | 約46.4万円 | 約557万円 | 約69万円 |
| 3.5% | 約49.4万円 | 約593万円 | 約105万円 |
借入1億1,000万円・30年・元利均等で、借りた時点からその金利だった場合の仮の計算です。実際の返済額は、金利が上がる時期や、借入の条件で変わります。
計算し直した収支に当てはめると、金利3.0%なら、1〜10年目の手残りは年約197万円に減ります。11〜20年目は年約27万円、21〜30年目は年平均で約91万円の手出しです。
見ておきたいのは、返済が家賃収入の何割を占めるかです。仮の例では、満室の家賃960万円に対して返済は年約488万円で、約51%です。金利3.0%なら約58%になります。この割合が高いほど、空室や修繕が重なった年に、手元のお金で補う場面が増えます。
借入の案は、次の点も確かめておきます。
- □ 変動金利か固定金利か。固定なら何年間か
- □ 返済の期間と、建物の構造(木造・鉄骨造など)の関係
- □ 自己資金と、修繕に備えて手元に残すお金
- □ 担保と保証人。家族が連帯保証人になるか
- □ 金利が上がったときに、繰上げ返済や借り換えができる条件か
借入が残っていれば、相続のときに家族が引き継ぐのが原則です。60代で長い借入を組むなら、引き継ぐ家族とも計画を共有しておくと安心です。
ほかの会社の意見は、同じ条件をそろえて聞く
この章の要点
- 比べるときは、戸数・間取り・仕様・家賃の前提をそろえる
- 借上げの契約を断ったあとに、再び勧誘することは禁止とされている
ほかの会社の意見を聞くのは、最初の建設会社を疑うためではありません。同じ計画を、別の立場から見てもらうためです。
| 相手 | 聞くこと | 持っていくもの |
|---|---|---|
| 別の建設会社 | 同じ戸数・間取り・仕様での見積り | 図面・仕様書・見積書 |
| 地元の管理会社 | 家賃と入居の見通し、管理の費用と進め方 | 間取り図・家賃の想定・収支表 |
| 金融機関 | 融資の条件、金利の種類と期間 | 収支表・見積書・土地の資料 |
| 税理士などの専門家 | 所得税や相続税への影響 | 収支表・土地の資料・家族の状況 |
税の見通しは、晃南土地にご相談いただく場合も、税理士などの専門家と連携して確かめます。
比べるときに大切なのは、前提をそろえることです。戸数や仕様が違う見積りを並べても、どちらが割安かは分かりません。家賃も、同じ想定で収支を出してもらうと、違いが見えてきます。
「今月中に決めれば値引きできる」と急がされる場面もあるかもしれません。それでも、借上げの契約は、重要事項の説明から1週間程度あけることが望ましいとされています。
断るときは、はっきり伝えてかまいません。ガイドラインでは、契約しない意思を示したあとに、借上げの契約を再び勧誘することは禁止とされています。
契約の前に、次の書類がそろっているかを確かめます。
- □ 見積書(材料費などの内訳つき)
- □ 家賃の根拠の資料(比べた物件の一覧)
- □ 30年の収支表と、その前提(入居率・家賃の変動・修繕費)
- □ 借上げの重要事項説明書と、契約書の案
- □ 借入の条件の書面(金利・期間・保証)
- □ 土地の資料(区域、農地かどうか、駐車場の契約)
晃南土地は、賃貸管理に加えて、建築やリノベーションまでご相談をお受けしています。建てたあとに貸し続ける立場から、家賃や管理の見通しを一緒に整理できます。
こんなときは、晃南土地にご相談ください
次のような場面にあてはまるときは、契約の前に一度ご相談ください。
- 提案書の家賃が、周りの部屋と比べて高いのか低いのか分からない
- 30年の収支表に、修繕費や空室の前提が書かれていない
- 一括借上げにするか、管理を任せる形にするかで迷っている
- 建てたあとの入居者募集や管理を、どこに頼むかまだ決めていない
当てはまるものがあれば、提案書を手元にご連絡ください。ご相談は無料です。契約前のアパートの家賃と管理を「晃南土地」に相談する
よくある質問
Q. 提案書をもらっただけで、まだ何も決めていません。相談してもいいですか?
A. はい、提案書をもらった段階からご相談いただけます。契約の前のほうが、条件を変えてもらう余地も大きいからです。提案書と見積書、収支表があれば、家賃と入居の見通しから一緒に見ていきます。
Q. 「30年一括借上げ」なら、30年間家賃は変わらないのですか?
A. いいえ、30年間同じ家賃とは限りません。借地借家法第32条により、契約の条件にかかわらず、サブリース会社が家賃の減額を求めることがあります。契約書の家賃の見直しの時期と方法を確かめ、収支表がそれを入れているかを見てください。
Q. 見積書の「一式」は、内訳を出してもらえますか?
A. はい、求めることができます。建設業法では、注文者から求められたら、材料費などの内訳を書いた見積書を、請負契約が成立するまでに渡すこととされています。「別途」の項目も、金額の目安を聞いておくと総額が読めます。
Q. 畑のままの土地にも、アパートは建てられますか?
A. 市街化区域の畑なら、農業委員会に届け出たうえで、農地以外にして建てる流れになります。市街化調整区域(建物を建てることを抑える区域)の畑は、建てられる場面がかなり限られます。生産緑地(農地として残すよう都市計画で指定された畑)は、市への買取りの申出などで制限を外す手続きが先に要ります。相続税の納税猶予を受けている畑は、転用すると猶予の全部か一部が打ち切られます。税の影響は、税理士などの専門家と連携して先に確かめます。
Q. 金利が上がったら、返済はどのくらい増えますか?
A. 仮の例では、金利が2.0%から3.0%になると、年の返済は約69万円増えます。借入1億1,000万円・30年・元利均等の場合です。借入額や期間、上がる時期で金額は変わります。提案書の金利より1〜1.5%高い場合も計算しておくと、備えの目安になります。
まとめ
「アパートの提案書、そのまま契約して大丈夫?」への答えは、「そのままではなく、前提を確かめ直してから」です。提案書は、判断のための材料の一つです。下の6つを確かめて納得できれば、契約へ進んでかまいません。
- 見積りは本体・付帯・諸費用に分け、「一式」「別途」の中身を聞く
- 畑や駐車場の土地は、区域・農地の届出・生産緑地・納税猶予を先に確かめる
- 家賃は、比べた物件と、成約した家賃かどうかで根拠を確かめる
- 30年の収支に、修繕(木造10戸の例で約2,160万円)と空室・家賃の下落を入れて計算し直す
- 一括借上げは家賃の見直しと解約の条項を読み、重要事項説明書は請負契約の前に受け取る
- 借入は、金利が1%上がったときの返済まで出して比べる
建てたあとの管理まで含めて考えたい方は、「晃南土地」の賃貸管理サービスを詳しく見るからご覧ください。
個別に聞きたい方は、アパートの提案書について「晃南土地」に問い合わせるからご連絡ください。
提案書を広げて、対面で話したい方は、総合不動産「晃南土地」我孫子店への来店予約をご利用いただけます。
なお、晃南土地は2026年12月に、柏駅から徒歩6分の柏市中央町に柏支店を開業する予定です。開業までの来店でのご相談は、我孫子店で承っています。所在地は、「晃南土地」柏支店のページでご覧いただけます。
まだ建てるかどうか決めていない段階でも構いません。提案書を読み解くところから、一緒に進めます。
企画構成・文/晃南土地 編集部
千葉県我孫子市を拠点に、1991年から地域の不動産に携わる晃南土地株式会社の編集部です。売買・賃貸・賃貸管理・買取り・リノベーションを一社で手がける立場から、柏・我孫子エリアの住まいと不動産の情報を、分かりやすくお届けします。
参考にした公的データ・情報
- 賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律/e-Gov法令検索
- サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン(令和5年3月31日改正)/国土交通省
- 借地借家法/e-Gov法令検索
- 建設業法/e-Gov法令検索
- 住宅の品質確保の促進等に関する法律/e-Gov法令検索
- 都市計画法/e-Gov法令検索
- 農地法/e-Gov法令検索
- 生産緑地法/e-Gov法令検索
- 民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック/国土交通省
- 金融市場調節方針の変更について(2026年9月18日)/日本銀行
- 金融市場調節方針の変更について(2026年6月16日)/日本銀行
- No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置/国税庁
- No.4147 農業相続人が農地等を相続した場合の納税猶予の特例/国税庁
- 農地等についての相続税の納税猶予及び免除等(相続税の申告のしかた 令和8年分用・抜粋)/国税庁
- 耐用年数(建物/建物附属設備)/国税庁
- 不動産取得税の軽減について/千葉県
- 令和5年住宅・土地統計調査千葉県確報集計結果の概要/千葉県