相続した物件を「兄弟で」貸している方へ|共有名義の家賃分配、曖昧なままにしていませんか?

相続がきっかけで、兄弟姉妹など複数人の共有名義になった物件。「今すぐ売却するのではなく、しばらくは賃貸に出して家賃収入を分け合おう」——そう決めた後、実際に何をどう進めればよいのか分からず戸惑うオーナーは少なくありません。
売る・貸す・住むの選択で迷っている段階の方は、『実家を兄弟で相続、どう分ける?我孫子の不動産を「売る・貸す・住む」で揉めないための進め方』もあわせてご覧ください。この記事は、その先の段階——共有名義のまま賃貸を続けると決めた後に発生する、管理の進め方・修繕の合意・賃料の分配といった実務を対象にしています。
共有名義の物件は、単独名義の物件とは異なり、意思決定の場面で共有者全員、あるいは持分の過半数の合意が必要になる場面があります。「誰が窓口になるのか」「修繕はどこまで一人で決めてよいのか」「家賃は誰にどう分けるのか」——単独名義であれば迷わず進められることも、共有名義になったとたんに立ち止まって考える必要が出てきます。この記事では、民法の共有物管理に関する考え方を踏まえながら、共有名義のまま賃貸を続けるオーナーが押さえておきたい実務を整理します。管理全体の進め方について相談したいという方は、晃南土地の賃貸管理サービスもあわせてご覧ください。
共有名義のまま賃貸を続けると決めたら、最初に整理すべきこと
共有名義のまま賃貸を続けると決めた場合、まず整理しておきたいのが「誰が窓口になるか」です。入居者募集、管理会社とのやり取り、家賃の受け取り、修繕の判断——これらを共有者全員がそれぞれ個別に対応するのは非効率であり、トラブルの元にもなります。
多くの場合、共有者のうち1人を代表者として決め、管理会社との窓口や家賃の受け皿を一本化する形が実務的です。代表者を決める際は、誰が窓口を担うか、その役割に対する負担をどう考えるかも、あらかじめ共有者間で話し合っておくとよいでしょう。
代表者は、管理会社との連絡、入居者からの問い合わせの一次受け、共有者への報告・分配など、通常の賃貸経営よりも多くの役割を担うことになります。「代表者だから」といって無償で担うのが当然というわけではなく、負担に見合う形(分配割合の調整や、実務対応にかかる費用の精算など)をあらかじめ共有者間で取り決めておくと、後々の不満につながりにくくなります。
代表者を誰にするかは、必ずしも「持分が一番多い人」である必要はありません。実際には、物件の近くに住んでいる人、平日昼間の連絡に対応しやすい人、過去に管理会社とのやり取りの経験がある人など、実務上の対応のしやすさで決まることも多くあります。共有者全員が納得できる基準で選ぶことが、後々の「なぜあの人が代表者なのか」という不満を避けることにつながります。
共有物の「管理」に関する基本ルール——民法252条の考え方
共有名義の不動産をどう扱うかは、法律上「保存行為」「管理行為」「変更行為」の3つに区分され、それぞれ必要な合意のレベルが異なります。令和5年4月1日に施行された改正民法252条では、この区分が次のように整理されています(民法/e-Gov法令検索)。
- 保存行為:現状を維持するための行為(簡易な修繕など)。各共有者が単独で行うことができる
- 管理行為:共有物の利用・改良に関する行為。共有者の持分の価格に従い、その過半数で決定する
- 変更行為:共有物の形状・効用を著しく変える行為。共有者全員の同意が必要
賃貸借契約の締結や解除は「管理行為」に区分されるのが原則で、改正民法では、建物の賃貸借については契約期間が3年を超えないものであれば、持分の過半数で決定できることが明文化されました。3年を超える期間の賃貸借を新たに設定する場合は、共有者全員の同意が必要になると解されています。
修繕は誰の判断で進められるか
共有物件の管理でオーナーが特に迷いやすいのが、修繕の合意です。修繕は、その内容によって扱いが変わります。
- 現状維持のための簡易な修繕(保存行為):各共有者が単独の判断で行うことができる。水漏れの応急対応など、緊急性の高い修繕はこれに該当することが多い
- 建物の使い勝手を高めるような改良(管理行為):持分の過半数の合意が必要
- 建物の構造や用途を大きく変えるような大規模な変更(変更行為):共有者全員の同意が必要
「小さな修繕まで毎回全員の同意を取らなければいけない」わけではありませんが、金額の大きい修繕や、原状回復の範囲を超えるリフォームについては、事前に共有者間で合意形成のルールを決めておくと、都度のやり取りがスムーズになります。「◯万円以下は代表者の判断で進めてよい」といった目安を共有者間で取り決めておく方法も、実務上はよく取られています。
判断に迷いやすいのが、「保存行為」と「管理行為」の境界線です。例えば、退去後のクリーニングや軽微な設備交換は保存行為に近い一方、間取りを変えるような大規模リフォームは変更行為に該当し得ます。個々の工事がどちらに当たるかの判断が難しい場合は、金額の大小にかかわらず、あらかじめ共有者に一報を入れておくという運用にしておくと、後から「聞いていない」というトラブルを避けやすくなります。
賃料の分配は、どういう考え方で行うか
家賃収入をどう分配するかは、共有者間で最も意識がずれやすいポイントの一つです。
民法の原則では、共有者の持分の割合が明確でない場合、各共有者の持分は相等しいものと推定されます(民法250条)。持分割合が明確な場合、家賃収入(賃料債権)はその持分割合に応じて各共有者に帰属するのが原則です。共有者間で持分割合とは異なる分配方法を合意することも可能ですが、その場合は合意内容を書面で残しておくことが望ましいとされています。
実務上は、管理会社を通じて家賃を代表者の口座に一括で集約し、そこから毎月または一定期間ごとに各共有者へ分配する運用が一般的です。この場合、代表者は受け取った家賃のうち他の共有者に帰属する分を引き渡す義務を負うことになるため、「誰にいくら渡したか」の記録を残しておくことが、後々のトラブル防止につながります。
賃料収入と確定申告の関係
共有名義の物件から得た家賃収入は、税務上も「代表者がまとめて申告すればよい」というものではありません。所得税は、その所得が実質的に帰属する人ごとに課税する考え方(実質所得者課税の原則)を取っており、共有不動産の家賃収入は、各共有者がそれぞれの持分割合に応じた不動産所得として、個別に確定申告を行うのが原則です。管理会社からの家賃が代表者の口座に一括で振り込まれていたとしても、税務上の所得の帰属先は持分ごとに分かれている、という点は誤解しやすいポイントです。
必要経費についても同様に、固定資産税や修繕費などを持分割合に応じて按分し、各共有者がそれぞれの確定申告で計上する形になります。「代表者が管理会社とのやり取りや経費の立て替えを担っているから、税務上も代表者にまとめて申告してもらう」という運用は、実質所得者課税の原則からするとずれが生じる可能性があるため、注意が必要です。
共有者ごとの持分割合、収入・経費の按分計算、青色申告を選択する場合の要件など、具体的な申告方法は個々の状況によって異なります。晃南土地は税務相談を承る立場にはなく、こうした按分・申告の詳細は税理士等の専門家との連携が前提になりますが、「そもそも何を専門家に確認すればよいか分からない」という段階であれば、管理実務の整理とあわせてご相談いただくことも可能です。
経費・修繕費の負担割合をどう決めるか
家賃収入を持分割合で分配するのと同様に、固定資産税や修繕費などの経費についても、持分割合に応じて負担するのが基本的な考え方です。ただし、実際の負担方法については、共有者間で次のような取り決めをしておくと運用しやすくなります。
- 家賃収入から経費をあらかじめ差し引き、残額を分配する(経費先取り方式)
- 経費が発生するたびに、持分割合に応じて共有者それぞれが負担する(都度精算方式)
どちらの方式にするかによって、日々の資金管理の手間や、共有者間での資金移動の頻度が変わってきます。共有者の人数や、家賃収入の規模に応じて、無理のない方式を選ぶことが大切です。
立替・精算の実務
修繕費や緊急対応の費用は、管理会社への支払いのタイミングの都合上、代表者が一時的に立て替えることも少なくありません。この立替金を放置してしまうと、「誰がいくら立て替えたか」があいまいになり、後になって精算しようとした際にトラブルの原因になります。
実務上は、次のような運用にしておくと精算がスムーズになります。
- 立替が発生した都度、金額・日付・内容を記録し、共有者間で共有する(グループチャットや共有の家計簿アプリなどでも構いません)
- 一定額以上の立替が見込まれる修繕については、事前に共有者へ連絡し、概算を伝えたうえで進める
- 精算は「都度」か「一定期間ごとにまとめて」かをあらかじめ決めておき、精算のタイミングが曖昧にならないようにする
金額の大小にかかわらず、記録を残す習慣そのものが、共有者間の信頼関係を維持するうえで重要な役割を果たします。
代表者口座・帳簿の実務
代表者が窓口を担う場合、家賃の受け皿となる口座は、代表者個人の生活費と混在させず、賃貸経営専用の口座として分けておくことを強くおすすめします。生活費と混在させてしまうと、いくら家賃が入り、いくら経費を支払い、いくら分配したのかが分かりにくくなり、他の共有者への説明も難しくなります。
あわせて、次のような簡易な帳簿・報告の仕組みを整えておくと、共有者間の情報格差を防ぐことができます。
- 毎月または四半期ごとに、収入(家賃等)・支出(管理費・修繕費等)・分配額をまとめた簡単な収支報告を共有者全員に共有する
- 領収書や管理会社からの精算書は、日付・内容が分かる形で保管し、必要なときに他の共有者もいつでも確認できるようにしておく
- 管理会社を利用している場合は、管理会社が発行する月次・年次の収支報告書を代表者だけでなく共有者全員に転送してもらう、あるいは全員が確認できる形にしてもらう
こうした「見える化」の仕組みは、代表者自身を「使い込みなどしていないか」という不要な疑念から守ることにもつながります。共有名義での賃貸経営を長く続けるほど、透明性のある運用が信頼関係の土台になります。
共有者間で意見が分かれたときの考え方
共有者の中には「早く売却したい」「もう少し貸し続けたい」など、方針が分かれることもあります。管理行為(賃貸借契約の締結・修繕の実施など)は持分の過半数で決定できますが、共有物全体の売却など「処分」にあたる行為は、共有者全員の同意が必要です。
「賃貸を続ける」という現在の合意自体も、将来的に共有者の状況(転居、資金需要、相続の発生など)によって変わる可能性があります。定期的に共有者間で状況を共有し、方針を確認し合う機会を持っておくことが、突然の意見対立を避けることにつながります。
例えば、共有者のうち1人がまとまった資金を必要とする事情ができた場合、「自分の持分だけでも先に現金化したい」という希望が出てくることもあります。共有持分は、他の共有者の同意がなくても自己の持分のみを第三者に売却すること自体は可能とされていますが、実務上は共有者間でのトラブルに発展しやすいテーマでもあります。こうした事態が想定される場合は、早めに共有者間で話し合いの場を持ち、必要であれば専門家を交えて選択肢を整理しておくことをおすすめします。
共有者の一人が亡くなった場合はどうなるか
賃貸を続けている間に、共有者の一人が亡くなるということも起こり得ます。この場合、亡くなった共有者の持分は、その人の相続人に引き継がれます。共有者の人数が増えることで、今後の意思決定がより複雑になる可能性もあるため、早い段階で相続の手続きを進め、権利関係を明確にしておくことが望ましいといえます。
権利関係が複雑になるほど、管理行為に必要な「持分の過半数」の把握も難しくなります。共有者が増える見込みがある場合は、あらかじめ管理会社や専門家に相談し、意思決定のルールを整理しておくと安心です。
また、共有者が増えるということは、賃料分配や収支報告を届ける相手も増えるということです。相続によって新たに加わった共有者が、それまでの経緯(誰がどのような役割を担ってきたか、これまでどう分配してきたか)を知らないまま関係に加わることも多いため、代表者から一度、これまでの運用を説明する機会を設けておくと、新しい共有者との認識合わせがスムーズになります。
丸ごと任せたい方に選ばれています
共有名義の物件は、通常の賃貸管理に加えて、共有者間の合意形成や分配の実務が加わる分、オーナー自身の負担が大きくなりがちです。誰かが窓口を引き受けても、日々の入居者対応・修繕手配・報告・分配まですべてを個人で回し続けるのは、想像以上に手間がかかります。晃南土地では、共有者間の窓口や分配ルールの整理から、日々の管理までまとめてご相談いただけます。「誰が何を担当するかを整理する段階から相談したい」という方にも対応しておりますので、賃貸管理をまるごと任せたいという方は、晃南土地の賃貸管理サービスをご覧ください。
我孫子で共有名義の賃貸物件を管理するオーナーへ
我孫子エリアでも、相続をきっかけに共有名義のまま賃貸を続けているオーナーは少なくありません。共有者間の合意形成や賃料分配の実務は、法律の考え方を踏まえつつ、共有者それぞれの事情にも配慮しながら進める必要があります。共有者の中には遠方に住んでいる方や、日中は仕事で連絡が取りづらい方が含まれることも多く、全員の足並みをそろえること自体が最初のハードルになるケースも少なくありません。
権利関係の整理そのものについては司法書士等の専門家との連携が前提になりますが、日々の管理をどう進めるかを整理したいという方は、総合不動産「晃南土地」我孫子店への来店予約 からご相談いただくこともできます。
まとめ
共有名義のまま賃貸を続ける場合、民法252条の考え方に沿って、修繕や賃貸借契約の締結は「管理行為」として持分の過半数で決定でき、簡易な修繕は各共有者が単独で行える「保存行為」にあたります。賃料は原則として持分割合に応じて分配し、経費の負担方法や合意形成のルールをあらかじめ共有者間で決めておくことが、トラブルを防ぐ鍵になります。共有名義の物件管理を整理したい、まとめて相談したいという方は、次のいずれかからご連絡ください。
状況だけ伝えて、何から確認すべきか相談したい方は、我孫子の賃貸経営について「晃南土地」に相談する をご利用ください。対面でじっくり話したい方は、総合不動産「晃南土地」我孫子店への来店予約 からお進みいただけます。管理サービス全体の内容を先に知りたい方は、「晃南土地」の賃貸管理サービスを詳しく見る をご覧ください。