


晃南土地株式会社の代表取締役・中澤洋一が、我孫子に関わる人たちと「我孫子」をキーワードに語り合い、「我孫子の魅力を言語化」し、「未来の我孫子の街のかたち」をゲストと探っていく。今回はそんなクロストーク連載。
第1回のゲストには、我孫子市出身で日本全国の現場で活動するアーティスト・Holhy(ホーリー)氏をお招きしています。後半となる今回は、「白樺芸術祭ABIKO 2025」にまつわる話を中心に語ってもらいました。この数年で一気に形を成してきた両者の「我孫子」への取り組みを振り返りながら、「我孫子の魅力」「自分たちが大切にしている価値観」「これからの我孫子のカタチ」を、掘り下げてゆきます。
A-LIFE HOLDINGS株式会社 晃南土地株式会社
代表取締役 中澤 洋一 / YOICHI NAKAZAWA
千葉県印西市出身。不動産業界一筋に歩み、都内など数社を渡り賃貸や売買の経験を積む。2014年に晃南土地株式会社代表取締役に就任。「不動産事業で地域を代表する企業を創造する。人をつなぎ、街創りの架け橋となる事業の創造とサービスの発展で、地域に貢献する。」を目標に掲げ、1991年創業の歴史を受け継ぎながらも、柔軟な視点とフットワークで街の事業開拓やイベントに積極的に参加し、新たな風を起こしている。我孫子に根ざした地元企業の代表として街をリードし、オピニオンリーダーとしても活躍の場を広げている。
ブリックハウスデザインスタジオ代表
ホーリー / Holhy
石川県小松市出身。幼少期より絵を習い、取手アトリエデザイン科、武蔵野森美術学園絵画科を卒業後、スケートボードを持って日本全国ヒッチハイク旅を経て、自分のスタイルを探すべくカナダへ留学。自然の多い場所で独自のグラフィティ感を育む。2015 年、オレゴン州ポートランド Compound Gallery での個展を皮切りに、ニューヨーク、サクラメントとアメリカでも活動。2019 年、帰国。現在は千葉県我孫子市在住、松戸市にアトリエ。2023 年より全国壁画ツアースタート。2025年、2025年、ZOZOマリンスタジアムに壁画を制作。大阪「万博アート自販機」プロジェクトでは選出された47アーティストの1人として参加。その他フジロックフェステイバルでのライブペイントに出演するなど国内各所で活躍している。
中澤:白樺芸術祭の話もしていこうか。『白樺芸術祭 ABIKO』は、我孫子で誕生した『白樺派』をテーマに、我孫子市と中央学院大学、そして株式会社晃南土地など、 産学官連携でのプロジェクトで、多くの人が関わることもあって、当初はスタートできるか分からない部分もあったんだよね。ホーリーは(白樺派の中心人物である)志賀直哉を軸に作品を作って、という話がきたときは、どう感じたのかな。

ホーリー:テーマがしっかり決まっていたので、やりやすさを感じましたが、志賀直哉さんの『暗夜行路』はしっかり読み直しましたね。そのほかにも、我孫子の歴史や、志賀さんが我孫子で過ごされた期間のこと、当時の日本の時代背景。そういったことを徹底的に調べました。そこで分かったのは、志賀直哉さんって、すごいイケてる人だったということなんですよ。かなりかっこいい文化人なんですよ。
中澤:そうなんだ。今でいうと、誰なんだろう。
ホーリー:例えるなら…見た目はオダギリジョーさんで、中身は落合陽一さんみたいな感じかな?
中澤:それは確かに、相当かっこいいね!

ホーリー:もし志賀直哉さんが現代に生きていて、僕が「我孫子駅の構内にあなたの絵を描かせてください。僕のテイストで、結構かっこいい感じで描きたいんです」って言ったら、絶対に「OK!」って言ってくれるだろうと思いましたね、ほんとに(笑)。あの絵に関しては、「毎年飾る」という前提でお話をいただけたので、既に僕は来年用の準備に取り掛かっています。来年見た時に「あれ、違うな」って感じてもらえるくらい。すごく良くなるイメージができています。
中澤:ホーリーって、そういう熱量がすごいよね。今回、制作期間は短かったのに。
ホーリー:絵を作る期間は確かに短かったですね。制作に入るまでの期間のほうが長かった。JRや我孫子市なども連携している場所ですし、「安全安心」が最重要だということで、調整に2〜3週間はかかったかな。絵の仕上げにかけた時間は、5日間くらいでした。
中澤:作品とか進め方によって、制作にかかる時間って全く違うんだね。
ホーリー:そうなんです。来年も楽しみにしていてください!
中澤:当日は、我孫子駅前にある「けやきプラザ」(千葉県福祉ふれあいプラザ)の最上階で、段ボールハウスを作るっていう、ワークショップも開いてくれたよね。周りがガラスの窓で、我孫子の街が見える部屋だった。僕も写真を撮りに行ったけど、我孫子の街を背景に、小学生たちが家を作ってるっていう風景がすごく素敵だった。家の中にも自由に絵を描いていて、子どもたちが自分だけの家を作っていく様子が、まるで我孫子の街を創ってるみたいだった。

ホーリー:午前と午後の2部構成だったんですが、午前やった子が午後の最後まで制作を続けているってくらい、みんな楽しんでくれました。みなさんの笑顔を見て、「ちょっと僕も貢献できたかも」って気持ちです。
20人近く参加してくれましたが、ほぼ全員が「家を持って帰りたい」って言ってくれたんですよ。高さ1.5メートルくらいある段ボールハウスなのにですよ!お父さんやお母さんたちも優しくて、「そっか、じゃあ持って帰ろうか」ってみなさん言ってくれるんです。しかしどうやって持って帰ったんだろう(笑)。

今回は、テーマはあえて設けずに、「まず組み立てよう」「使いたい色を使って塗ろう」「家ができたら写真を撮ろう」とだけ決めていました。場所が我孫子の街を見下ろせる部屋だったので、「この街の家を自分で作ってみよう」みたいなテーマにして。
中澤:終わってみて、子どもたちに伝えたいメッセージとかある?
ホーリー:「やってみてくれてありがとう」って言葉ですね。僕はずっと「絵」を通じて社会とコミュニケーションを取って生きてきたんですね。絵というフィルターを通せば、お互いに色々と通じ合えたり、会話ができる。だから、参加してくれてありがとうって思っています。
今回、色をバシャーンって塗った子がいたんですが、「ああやって塗ったのは、なんで?」って聞いたんです。するとその子は「音が出るから楽しくてやった」と。僕は、「音だったのか! なるほど!」と思う。そして「叩く行為そのものが楽しかったんだ!」っていう発見になった。絵をきっかけに、一緒になって話せるんです。その子の個性や感情、好みがそこには全部入っているんですよ。そういったやり取りが「絵」を通じてできることが楽しいですね。

中澤:ホーリーは、ワークショップや試作会をやる時には、参加者全員の反応を覚えてるんだと話していたよね。
ホーリー:はい、覚えています。参加者の「カルテ」を作ることもあります。カルテがあると、前回こういう色で塗って、こういう感じだったから、次回はこうしようか、って提案することもできるんです。僕は絵に対して好奇心が強いほうなんだと思います。
中澤:そういえば、僕も小学校の頃に2〜3年絵画教室に行ってたことがあったな。当時の先生ってすごく偉大に見えていたことを、今思い出したよ。子どもの頃の体験は大人になっても忘れないものだから、ホーリーとの体験や感覚をいつまでも覚えている子がいるかもしれないね。僕ら、3年前に出会ってから、少しずつ夢を形にできてきてるよね。当時は、我孫子の人たちが「夢」を見たり、実現できる場を作ったりするなんて想像もしていなかった。でもホーリーが、我孫子という土地で作品を作っているのを見ると、思いって通じるんだと強く感じてます。
ホーリー:地道で時間がかかることですけど、我孫子の街づくりのひとつとして、活動は続けていきたいなと思います。僕は今回の芸術祭を通じて、絵を見て笑顔になっていたお母さんや子どもたちの表情を見ることができて、「ああ、洋一さんのやりたいことって、こういうことだったんだ」って感じたんですよ。我孫子に笑顔が溢れていく感じ。

中澤:白樺芸術祭では、我孫子という地に関係する人、我孫子で活躍したい思いがある人、人をワクワクさせられる魅力ある人を中心に声をかけて、参加してもらいました。
ホーリー:中澤さんのいう「魅力ある人」って、どういうところなんですか?
中澤:探求し続けてる人、かな。あとは「この人といたいな」って感覚。仕事では「ゴールを定めて逆算で実行する」ってスタイルを基本にしてるけれど、街づくりは「積み重ね」だから。だからわりと感覚で決めてるかな。

街づくりは色んな人が関わってできること。自分の力だけじゃ何もできない。だから、ひとつずつ積み重ねていく。僕としては、シンプルに楽しみながら街づくりをしていきたいと思ってる。だって、みんなの笑顔が見られたら嬉しいし、僕もその笑顔の一人になりたいから。
ホーリー:なんかそれ、アート作ってるみたいな感覚ですね。
中澤:ホーリーからすると、そういう言語になるのか(笑)。

中澤:僕は不動産会社を経営してきて、我孫子の人たちから、「我孫子って、子育てにすごくいい街だけれど、子育てがひと段落したあとに、楽しめるものや喜べるものがない」って話を、あちこちで聞いてきたんだよね。
でも我孫子にも魅力はあるし、作っていくこともできると思う。ホーリーにとって「我孫子の良さ」って、一言でどんな表現になる?
ホーリー:うーん。「身構えなくていい。カッコつけなくてもいいところ」かな。
中澤:いいね。身構えなくていい街、我孫子。じゃあ次に、ホーリーが価値観や信念として大切にしてることは?
ホーリー:僕は、何もないところから何かを作っていくのが好きなんです。1を2にするより、0を1にする方が好き。
僕は美術系の大学も出ていないし、アーティスト会社にもプロダクションにも所属していない。顧客リストも自分で作って、クライアントも自分で見つける。ギャラリーともあまり関わりがない。そんなやり方でも、10年以上職業として活動できているんです。だから、仕事や人間関係を広げるために、本質的な部分を大事にしようと思っています。
中澤:本質的な部分というと?
ホーリー:「いいものを作る」ことに尽きます。いいものというのは、自分にとってのいいものじゃなくて、「社会と人にとって」のいいもの。社会や人が喜ぶもの。そこが大事なんです。
もうひとつ、人として立派であろう、とも思っています。関わっている人から「あの人は立派だね」って思われる人間でいたいし、なりたい。だから、どうすれば人の役に立つか、それを考えて作品を作ったり、活動したりしています。
仕事として依頼を受けて壁画を描くだけじゃなく、地域住民や子供たちのためのワークショップもやるようにしたり、人との接点を必ず持つようにしたり。見せるだけじゃなく、僕自身が目の前にいる人と接する。それが僕の中でいう「本質」です。

中澤:ありがとう。じゃ最後に「これからの我孫子」はどんな街になるかな?
ホーリー:勝手なこと言うと、我孫子の街に色んな商売をやってる人が集まってきてほしいなと思っています。コーヒー屋があって、ピザ屋があってクラフトビールの専門店もあったりして。子供達も、昼はあそこの絵画教室へ行って、隣のお店の店長のところに顔を出して、夕方は英語を習いに行って、夜はみんなであの店で親も集まって晩ごはんみたいな(笑)。
子どもが「我孫子の駅前って楽しい」「我孫子の公園周りって楽しい」って思えるような街。チャリで回れるくらいのサイズ感でいいんです。歩いて過ごせて、仲間たちとばったり会ってっていう。昔ながらの商店街みたいな感じですよね。人とのつながりがあって、お互い応援して、お互いの商売を作っていくような空気。今、そういうものが求められてる気がします。

中澤:確かに。店やモノがあるからそこに行く、じゃなくて、「誰かがやってるからそこに行く」みたいな。
ホーリー:そうですそうです。個にフォーカスしてる。それって、多分僕たちの世代の感覚としても、懐かしさがあるのかもしれない。
だからこそ、そういう人たちが集まって、一緒にやっていける環境を作る。勇気が得られて、一歩踏み出せる環境やコミュニティを作る。そういうことが必要だと思います。
中澤:街にホーリーの絵があってさ、歩く人が絵を気になって「なんだろう」ってなる。そしたら、あの事務所でホーリーが教室やってるらしいから行ってみよう。その横のカフェで店長の顔をみていこう、みたいなね。それを「面白い」って感じた人たちがさらに集まってくる。我孫子がそんな街になったらいいですよね。
ホーリー:いやぁいいですね。今日はいっぱい喋ってしまった(笑)。
中澤:めちゃくちゃ楽しかったね。またいろんなこと、我孫子でやっていきましょう!
「我孫子の魅力とは?」
そう聞かれたら、あなたは何と答えるでしょう?
ホーリー氏は今回、我孫子を「身構えなくていい街」「カッコつけなくていい街」と答えてくれました。そしてこれからの我孫子について「人々が笑顔で交流しあう、そんな風景が見える街」と回答してくれました。
次回もまた、我孫子に関わる人たちと「我孫子」を語りあっていきます。
100人に聞いたら、100人分の答えがあります。その中に「我孫子の魅力」で重なる答えが出てくる。その重なりの先に「これからの我孫子のカタチ」も見えてくる。
この連載を通して、晃南土地は“我孫子を言葉にする”試みを続けていきます。
(前半のクロストークはこちらから)
(写真/中澤洋一、構成/里見有美)