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私たちの街創りby Abiko A-life

2026年01月10日

我孫子の魅力を探るクロストーク 対談|中澤洋一 × Holhy(ホーリー) – 前半 –

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晃南土地株式会社の代表取締役・中澤洋一が、我孫子に関わる人たちと「我孫子」をキーワードに語り合い、我孫子の「魅力」を言語化し、未来の我孫子のまちのかたちを探っていくクロストーク連載。

第1回のゲストは、我孫子市出身で日本全国の現場で活動するアーティスト・Holhy(ホーリー)氏です。

 

晃南土地株式会社の事務所に飾られた「ツツジ」の絵はは、ホーリー氏が手がけた作品です。

 

ふたりはこのアート制作から関係を深め、2025年の春には、我孫子市の「市制施行55周年記念事業」のひとつである「手賀沼公園」のトンネル壁画の制作をすることになりました。さらに同年末には「白樺芸術祭ABIKO 2025」を、中澤氏主導で開催。ここではホーリー氏による志賀直哉の巨大な壁画が、JR我孫子駅構内に展示されました。

 

この数年で一気に形を成してきた両者の「我孫子」への取り組みを振り返りながら、「我孫子の魅力」「自分たちが大切にしている価値観」「これからの我孫子のカタチ」を、掘り下げてゆきます。

 


 

PROFILE

 

A-LIFE HOLDINGS株式会社 晃南土地株式会社

代表取締役 中澤 洋一 / YOICHI NAKAZAWA
千葉県印西市出身。不動産業界一筋に歩み、都内など数社を渡り賃貸や売買の経験を積む。2014年に晃南土地株式会社代表取締役に就任。「不動産事業で地域を代表する企業を創造する。人をつなぎ、街創りの架け橋となる事業の創造とサービスの発展で、地域に貢献する。」を目標に掲げ、1991年創業の歴史を受け継ぎながらも、柔軟な視点とフットワークで街の事業開拓やイベントに積極的に参加し、新たな風を起こしている。我孫子に根ざした地元企業の代表として街をリードし、オピニオンリーダーとしても活躍の場を広げている。

 

 

ブリックハウスデザインスタジオ代表

ホーリー / Holhy
石川県小松市出身。幼少期より絵を習い、取手アトリエデザイン科、武蔵野森美術学園絵画科を卒業後、スケートボードを持って日本全国ヒッチハイク旅を経て、自分のスタイルを探すべくカナダへ留学。自然の多い場所で独自のグラフィティ感を育む。2015 年、オレゴン州ポートランド Compound Gallery での個展を皮切りに、ニューヨーク、サクラメントとアメリカでも活動。2019 年、帰国。現在は千葉県我孫子市在住、松戸市にアトリエ。2023 年より全国壁画ツアースタート。2025年、2025年、ZOZOマリンスタジアムに壁画を制作。大阪「万博アート自販機」プロジェクトでは選出された47アーティストの1人として参加。その他フジロックフェステイバルでのライブペイントに出演するなど国内各所で活躍している。




我孫子のアーティストたちと「我孫子で何か発信したい」。そう語り合った日から3年。

 

 

 

中澤:今日はよろしくお願いします!

ホーリー:こちらこそよろしくお願いします。対談、楽しみにしていました。

 

中澤:この間の、白樺芸術祭(※1)以来だよね。今日は事務所まで来てくれてありがとう。

さて、まずはホーリーと僕の最初の出会いの話から始めようか。僕らが初めて会ったのは、たしかグリーンロケッツの試合を見に行った時だったよね。ダイちゃん(共通の友人)が「なんか面白いやつがいるから」って僕に話してきて、会わせてくれたのがきっかけ。

ホーリー:そうでしたね。あれからもう3年くらい経ちますね。

 

中澤:彼が、我孫子出身のアーティストで「ホーリー」っていうやつがいるんだよって教えてくれたんだよ。「(中澤)洋一はアーティストを応援しているし、彼に会ったらきっと何かおもしろいことが起こるよ」って言ってくれたんだよね。確かそのときは、ホーリーはフジロックとか日本のあちこちで活躍していて忙しかったと思うんだけど。我孫子で何度か食事したり、何回か会ったけど、そのたびにホーリーは、「できれば我孫子で何かしたい」って言ってたし、僕も我孫子でクリエティブな人たちと何かしたいと思ってた。

 

ホーリー:そうですね。お会いしてからずっとですね。「我孫子で何か!」という話はしていましたよね。僕自身はずっと前から「地元で何かしたい」という思いは抱いていたんです。なんていうのかな、長い間ずっと引っかかっていたテーマというか。

 

中澤:そうだったんだね。僕は我孫子に関わっている人たちと、我孫子で何かしたいという思いがあったから、ホーリーから「ここ(晃南土地)で最初に描きたいです」って言われた時はすごく嬉しかったんだよね。ホーリーがすごい熱量で話してくれたんだよね。

初めての我孫子のかああつど奥羽は、こである「ツツジ」の制作

 

ホーリー:たしか、我孫子市の花である「ツツジ」を描かせてもらったんですよね。あれが一番最初の「我孫子での活動」だったんですよ。本当に。その後、今年(2025年)になってからは、手賀沼公園のトンネル壁画のお話をいただいたり、白樺芸術祭でも絵で関わらせていただいたりして、あの頃からですかね。ようやく「地元で何か」が、形になってきたって感覚がありました。

 

中澤:そういえば、去年(2025年)我孫子の、手賀沼公園のトンネル壁画(※2)を描いてもらった時は、最初は”我孫子の鳥”である”オオバン”を描こうっていう案もあったね。あれは我孫子市の市制施行55周年記念事業のひとつだったんだよ。

ホーリー:我孫子市は鳥で有名な街だし、『鳥の博物館』もあるので、鳥のまちとしての切り口として市の鳥である「オオバン」は分かりやすいと思ったんです。だからラフの時点で、オオバンの親子を描いていました。親子を描くことで、それが徐々に、お父さんと子ども、お母さんと子ども…みたいに、関係性を広げて描いていけるんじゃないかな、そうなったら面白いなとも思って。


ところが、オオバンって目の部分が赤いんですね(笑)。だから、その目を絵にすると人によっては「怖い」と感じる人がいるかもしれないという懸念が僕の中であったんです。そうしたら案の定、市の方から「目が赤くて怖い。申し訳ないけどオオバンは避けたいです」って声をいただきまして。

 

中澤:オオバンは可愛いけどね。絵にすると怖く感じるっていうことってあるんだね。

 

ホーリー:僕、作品を作る時に必ず決めていることがあって。「見た瞬間に、見た人の気持ちが明るくなるような絵」を描きたいとずっと思っているんです。だから思い切ってオオバンは諦めて、我孫子の「花」であるツツジにしようと。すぐに切り替えました。

 

手賀沼公園のトンネル壁画。5月の手賀沼は「まるで楽園のよう」だった

 

中澤:手賀沼公園のトンネル壁画、今では写真スポットにもなっているよね。制作中のエピソードを聞かせてもらえる? 実際に描き始めたのはいつ頃だったっけ。

 

ホーリー:5月頃です。5月の手賀沼って、知ってますか? ものすごく過ごしやすい季節なんですよ。僕はあのすごくいい時期の大半を手賀沼公園で過ごさせてもらったんですが、最高でした。手賀沼公園って、小学生や高校生が毎日遊びに来るんですよ。大人たちも多くて、散歩している人もいれば、ランニングをしている人もいる。なんだかその、自然と人々たちが調和している光景が、「これは楽園みたいだなぁ!」って毎日思っていました。気候もすごく気持ちよかったし。

 

中澤:ホーリーが絵を描いてると、人も集まってくるでしょう。クリエイティブなことをしている人には、自然と人が集まってくる。

 

ホーリー:そうなんですよ! 最初は子どもたちが僕に近づいてくるんです。しかも結構な数の子どもたちが。だから僕も、「じゃあ一緒に描く?」なんて声をかけて。お父さんやお母さんたちも混ざって、一緒に絵を描いたり色々話をしたりしました。あの瞬間に、「あびこいい街だなぁ」って、しみじみ感じました。我孫子の人たちと絵を介してコミュニケーションが取れるという、本当に貴重な時間でした。

 

中澤:ホーリーの活動って、描くことだけじゃなくて、”人との接点が自然に生まれていく”のが面白いところだよね。まちづくりも同じだと思うな。特に壁画って、まちの中にある「開いたアトリエ」みたいなもの。

 

ホーリー:僕も近い感覚があります。描いてる最中に、現場がそのままコミュニケーションの場所になる。今回の絵も、最初から「明るい印象にしたい」「子どもが喜んでほしい」みたいな目的を持たせていたので、制作期間中から子供が集まる場になったのは嬉しいことでしたね。

 

我孫子に志賀直哉さんがいたこと。この事実をどうやって今回の作品に落とし込むか。

 

中澤:ホーリーは本当に色んな現場で描いてるけど、作品が生まれるまでのプロセスってどんな感じ? どれくらい時間を使うのかも含めて聞いてみたいな。

 

ホーリー:うーん。言語化するの難しいですね(笑)。
でも、まず僕は「単語」をトピックとして箇条書きにすることから始まりますね。例えば、「明るい印象」「子どもが喜ぶ」「アイコンが広がっていく」みたいな。

 

中澤:言葉というか、単語をたくさん出して、そこからどう絵に展開していくの?

 

ホーリー:その単語たちをみて、「それをどう解釈するか」とか、「取っ掛かりをどこに置くか」ということを徹底的に考え抜きます。
例えば、今回参加させていただいた「白樺芸術祭 ABIKO」での志賀直哉さんの絵、を描くに至った流れでいうと、まず「志賀直哉さんが我孫子にいたこと」という事実を僕なりにどう捉えるか、ということから始めました。
「文学の角度」から解釈しようか、それとも「我孫子にいた文化人」的な文脈で志賀直哉という人を解釈するのか。あるいは、僕ニューヨークやカナダにいたときに見た「まちの面白さ」という魅力を、この我孫子に置き換えて再現してみるほうがいいのか、とかですね。
どれを選んでいくかは、自分自身が面白いと感じるかどうかも大事なんですが、僕は「みんなが面白がってくれそうなポイント」はどれか、という点を大事にしていて、その中からいくつか探していきます。

 

中澤:大変な作業だね。その期間は結構長くかかるものなの?

 

ホーリー:そうですね、長いですね。単語を出して、ポイントを探って。そのあとパソコンや書籍を触って、調べたり、まとめたりを繰り返します。手で描いたりすることもあります。そしてまたパソコン見て、本を読んで、音楽を聴いて。「この音楽にあやかってこうしようかな」なんてこともあります。探っていく感じです。すごく楽しい作業でもありますが、部屋がめちゃくちゃ散らかるんですよ(笑)。書類も絵の具もパソコンも、全部出るから。広げて広げきって、最後に風呂敷を一気に畳む!みたいな感じなんです。

 

 

中澤:手賀沼公園のトンネル壁画は、結局どれくらいかかった?

 

ホーリー:いい取っ掛かりが見つかると、そこから一気に進むんですが、描く前の検討期間が1〜2ヶ月くらいありましたね。で、現場には2ヶ月間近くいた感じです。絵そのものは出来上がっている段階にあるとしても、まだもっと良くしたいと思う自分がいるからなんです。自分でも「なぜ僕は自分から大変なことを提案して、さらに大変にしていくんだろう」って思ってますが(笑)。

 

中澤:でもそれって、「本当にいい」って言わせたいのと、自分も納得したい、ってことが大きいんじゃない? ホーリーのいいところは、その「感覚」をすごく大事にしてる点だと思うよ。最初のツツジの作品も、僕が好きなコーヒーを画材に使って描いてくれたりさ。すごく試行錯誤していたよね。今回のトンネル壁画も、白樺芸術祭の作品も、現場で見てると伝わってくるんだよね。ホーリーがその作品に対して、かなりの熱量というか、熱意を持って取り組んでくれてるっていうことが。そこが、ホーリーと一緒にやってて楽しいところなんだよね。仕事ってさ、求められたものを納期通りに仕上げるのが基本でしょう。それは正しいことだし、納期を守ることで信頼感を得て、次の仕事につながるものだと思う。


でも、ホーリーは「さらに良くして伝える」ことを大事にしてるアーティストだから、そういう動き方の人は、気持ちが伝わったところまで仕事をやり切るスタイル。それは正しくないわけではなく、そうすることで連鎖反応が起きて、次の仕事につながっているんだよね。実際に。

 

ホーリー:いや、こっちはいつも「遅れててごめんなさい」って思ってますよ(笑)。

ただ、ありがたいのは、洋一さんみたいに僕のことを、仕事のスタイルごと楽しんでくれださる人がいることです。でも実は難しいところもあって。やりすぎても、逆にもう良くならない」ってことはあるんです。やりすぎちゃうタイプの僕だから学べたことです。到達しない時は、「俺の実力は今ここまでか」って認めて手を止めます。それはとても悔しいことだけれど、今回はここまでなんだなって。

 

100%出すとありががとう。120%だとおせっかい。本当のありがとうは110%

 

 

 

中澤:それ、面白いね。僕は経営者という立場から、会社でよくみんなに「ありがとう」の話をするんだよ。

 

ホーリー:ありがとうの話ですか?

 

中澤:そう。僕らは、お客さまから求められるものを100%出せると「普通のありがとう」をもらえるんですね。でも、120%出すと「おせっかい」になる。
ちょうどいいのが110%
くらい。ここが「本当のありがとう」につながる仕事だと。

 

ホーリー:面白いですね。どうすると110%になれるんですかね。

 

中澤:僕は、「プラスアルファのサービスをひとつだけする」って言い方をしてる。ただ、ホーリーの場合は、110にしようとすることで、すでに納期をオーバーしてしまうこともあるよね。だから、仕事としてやる場合は調整が必要なのかもしれない。まぁ、だけど僕の場合は、最初からホーリーのスタイルを理解したうえで頼めばいいと思ってるから問題ないんだよ(笑)。

 

ホーリー:そう言ってもらえると救われます。僕の「もっと良くなると思う」っていう提案を、「納期が遅くなる」という感覚だけで捉えられてしまうのではなく、「一緒に面白がってくれる」。そういう人がいると、僕の仕事は何倍も楽しくなります。なんていうのかな、そう言う人たちがいると人生が良くなる感じがしますよね。100%は一旦到達している。仕事はもう終わっている状態。でも「もっと良くなるんで、一緒にしませんか」っていう話を、前向きに楽しんでくれる。受け入れてくれる人が我孫子にいるんですよね。

 

中澤:僕もホーリーに出会えて幸せだし、同じ我孫子でこうやって何かできることが本当に嬉しいと思ってるよ。

 

(・・・後半に続きます)

 

 

参考リンク
※1 白樺芸術祭 ABIKO(公式サイト)
※2 手賀沼公園 ミニ鉄道トンネル
ホーリーさんのInstagram

 

(写真/中澤洋一、構成/里見有美)


 

 

後半は2025年秋に行われた「白樺芸術祭 ABIKO」にまつわる、中澤氏とホーリー氏のクロストークです。