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私たちの街創りby Abiko A-life

2019年10月17日

美味しいって、正解がないんです。だから面白い。「ARUKAS」

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我孫子駅を北口に降りて歩くと程なく、赤いフレームのエントランスが印象的なお店があることに気がつく。電球色の温かな印象の店内を信号待ちの交差点で眺めていると思わず足が誘われる。そんな魅力のカウンターキッチン。オーナーシェフ、冨田正人さんにお話を聞きました。

 

 

お料理を始めた物語を教えてください。

子供の頃から作るのが好きでした。父が肉を食べないので、食卓は常に魚中心家庭でした。姉がいるのですが、その姉がある日パスタを作ってくれたんです。有塩バターを絡めただけの今考えると食べられたもんじゃないような、そんなパスタだったのですが(笑)、それがその当時の僕には美味しすぎて感動してしまい、動物性の油の強烈さに物凄い衝撃を覚えたのがきっかけです。それ以来、中学に入るとご飯までの時間のおやつとばかりに、あれこれ家にある食材を見つけてインスタントラーメンにのせる具を作るのに夢中になっていました。最初は野菜を炒める程度でしたが、やっているうちに段々とこだわりが出てきて、色んなことを挑戦していましたね。高校に入ると飲食でバイトも始めたりしていたので、大層なものではないですが、自分であれこれ面白そうと思ったことをやってみてレシピを作るようになっていました。食べることが好きだったので、あれこれ実験してみていましたね。

 

 

高校を卒業し、何をするか考えないとならない時期が来ると、当時やりたいこともはっきりしていなくて、はっきりしているのは料理が好きなことくらいだったので、卒業後イタリアンのお店に就職しました。

 

その会社はホールも厨房も全てやるようなスタイルの会社でしたが、3ヶ月目に移動したお店が兎に角忙しいお店で、そこでの経験で今思うと自分が出来上がったのかな、と思います。1日にパスタを400食ほど作るのですが、週末は5~600食をゆうに越え、夜はバータイムでお酒も出すような運営でしたので辛くてしょうがなかったですよね。

 

 

料理は反復練習。

お料理って反復練習なんですよ。美味しいものを作るということはできますし、当たり前なんですが、例え忙しい中でも同じクオリティで作れるっていうのは簡単ではないので、それができるのは何度も何度も繰り返し作ってからこそなんです。料理は化学って言われるくらいで、頭で考えると結構美味しいものを作れるのですが、でもそれをやるためには「経験」が必要なので。大変でしたが、最初の就職先のお店で、その「経験」を積めたのがよかったです。

 

18歳で入社して、毎日本当に忙しくて大変で、正月に帰省した際に同級生で進学した仲間が楽しそうにしているのを見ると、「俺何やってるんだろう。」って悲しくなることもありましたが、でもこれくらいの頃でしたね、自分の店をやりたい、そう強く思うようになったのは。

 

 

周りより早く好きなこと、大切なことを見出す!

好きなことに対して学ぶのは好きです!学校の勉強は面白くなくて全然できなかったですが(笑)。子供がのめり込むような題材がすくなかったのが原因ですよ、勉強嫌いは子供達(私)のせいじゃない、と言いたいですね(笑)

 

 

 

料理はバケガク。というのは?

料理は全て数値化でき、足し算も引き算も割り算も掛け算も全てあります。料理人は理数系脳の方が強いかもしれません。数学は昔から得意でした、解く楽しみがありましたので。答えが決まっていて必ず答えが出るのがわかっていたので楽しかったです。

 

 

 

では、お料理も算数と同じですか?回答は1つですか?

いや、そこは違いますね。料理は食べてくださる方がいて、人によって全く異なる感想があるので、答えはむしろ無数にあります。ただ作るときに自分の中に、「これだ!」という回答を1つしっかり持っておくことは非常に重要だと思います。そこがブレていると、何にも合わせられなくなりますので。どんなことにも言えると思いますが、自分の指針をしっかり持つことはすごく大切だと思います。人間なので、揺らぎは勿論常にあるものですが。私も常に葛藤ですよ。(笑)

 

 

 

答えを相手に委ねる、答えを決められない面白さはありますか?

ありますね!永遠に答えが出ないですよね!お客様がいることで、自分では至らない気づきや発見も沢山あります。自分が苦手な食材でホヤがあるんですが、お客様から石巻でとれた獲れたての蒸したホヤをいただいたときに、あまりに美味しくて驚かせられました。尽きないですね。

 

 

 

 

 

食材へどのようなこだわりがありますか?

野菜はできる限り地元の旬な食材を使うように心がけています。季節ごとに食材の都合でお付き合いが限られてしまいますが、ハーブや茄子など我孫子の農家さんにお世話になっています。

 

 

 

お店の季節限定の定番人気メニューに「蓮根ステーキ」があるのですが、茨城の蓮根農家さんに自分から赴いて買いに行ってます。

 

看板メニューの牛ホホ肉の赤ワイン煮は、国産黒毛和牛で柔らかく食べやすいものを選びこだわって作っています。かしこまったのが嫌いで、気軽な感じで楽しんでいただきたいので、好きなものを好きに食べて飲んでいただくスタイルですが、お料理にあうものを聞かれたらお答えしています。お料理をメインに考えているので、飲み物はあくまでお料理のお供程度に楽しんでもらえたらいいのかなと思っています。

 

 

 

 

ヴァンヌフの初代店長さんだと伺いました。

はい、柏でアルバイトをしているときに先輩に我孫子にVingt-Neufヴァンヌフというバーがオープンするから一緒にそこで働こうよと誘われ、お酒を学びたいと思っていた時期だったので、すぐにお店に行きました。そこでオーナーの川西さんにお会いして、「ここで働きたい!」とすぐに伝えました。そこからトントン拍子で、10年半店長をしていました。ヴァンヌフでの経験があるので我孫子にお店を開けたというのもあります。

 

 

自分の飲食店をオープンしたかったのですが、バーで働いていたので、体が飲食店についていける自信がなく、早急に身体づくりをしたくそれには最強に忙しいお店に入ることが一番だと若き頃の経験で知っていたので(笑)、ヴァンヌヌフを退職して、都内で当時人気のあった「魚金」というお店に入りました。そこで一気に体を整えて、物件が見つかったタイミングで2016年10月24日にARUKASをオープンしました。

 

我孫子へは、もともと茨城の利根町の出身で、結婚して柏に家族で住んでいましたが、子供ができたタイミングで帰りも遅い職種なので、会社の近くに引っ越しをしたく、晃南土地で物件を紹介いただき、我孫子に引っ越してきました。

 

 

お仕事の都合と子育てのタイミングで我孫子に越されていますが、感想は?

我孫子はやっぱり子育てしやすい街ですよね!繁華街もなくガヤガヤしてないですし。お客様も兎に角みんないい人が多いです。品がいいです。オラオラな人は我孫子にいないですよね。うちのお店のお客様はみんな紳士淑女で、スマートな人ばかりです。兎に角品が良い。逆にお店で定例で音楽イベントなんかもやるんですが、そういう時はもうちょっと羽目を外してくださってもいいのかなと思ってしまうくらいです。

 

我孫子の街は、子供にもすごく優しいと思います。人がいいからですかね。子育て世代が多いからですかね。子供がいると騒がしいのは仕方ないことなのですが、子供が騒ぐことに煩くいう人がいないように思います。自然が多く、遊ばせる場所に悩んだり困ったことがないです。子供が遊んで学ぶことが多いのはやっぱり自然の中だと思うのですが、手賀沼公園もそうですし、我孫子は自然が豊かな公園や広場が多いので、気持ちよくのびのび子育てできますよね。

 

ARUKASという不思議な横文字。店名はどういう意味があるのですか。

4月1日生まれなのですが、母が産気づいて産婆さんのところに向かった時、まだつぼみだった桜が、退院したら満開だったというエピソードを聞いて以来、自分の花を「桜」だと思っています。ARUKASはSAKURAを逆さにしてできました。

 

 

我孫子に出店し、次の目標は?

他のジャンルの飲食は挑戦してみたいですね。「自分の行きたい店」がコンセプトなので、餃子1種類で勝負するようなお店とかやってみたいです。でもまずは何より、目標であった自分の店を持つことに対して、しっかりとした揺るぎない地盤をここ我孫子で創っていくことが最優先ですね。

 

ARUKAS
住所:〒270-1166 千葉県我孫子市我孫子1-8-17ル・ソルボンヌ103
TEL&FAX : 04-7192-7222
OPEN : 16:00~24:00
定休:日曜祝日

Facebook : @arukas1024

Instagram:@arukas1024

 


 

語り手:冨田正人 (ARUKAS オーナー)

聞き手/ 編集  : 大坪祐三子